非皮膚科医
褥瘡の治療って種類が多くてなんだかとっつきにくいです…
確かに…
実は”創の深さ”を意識して治療すると治療法がすっきりまとまりますよ!
そんなこと考えたことなかったです…
そして、最後に治療においても予防においても最も大切なことお話ししますね
今回から8回にわたって褥瘡治療のお話をしたいと思います。
その第1回目は”褥瘡の深さによって治療法を変えましょう!”というお話です。きっと、”はぁ…”とピンとこない方もいらっしゃると思います。
では、なぜ褥瘡治療の始めにこんな話をするのか…それは
褥瘡の治療を考える上で創の深さを意識すると、創に対してどのようにアプローチすればよいのか明瞭になる
と、考えているからです。
褥瘡に対して、数多くの塗り薬や創傷被覆材、陰圧閉鎖法など選択肢があり、一体それぞれの患者さんにどの治療が最適なのか、路頭に迷うことは少なくないと思います。
そんな難解な褥瘡治療に対して、最もシンプルな解決法が創の深さを意識した対策、だと考えています。
実は、これは褥瘡に限ったことではありません。この深さに応じた対策、という考え方は、熱傷でも外傷でも基本的には大きくは変わらないと考えています。
創の深さに応じた治り方を知ることで、なぜすぐ治る創や治りにくい創があるのか、それぞれでどのように治療法を変えていけばよいのか、がかなりすっきりすると思います。
是非、今回のお話が、褥瘡治療に携わるみなさんのひとつの道標になれば幸いです。
(基本的に医療従事者向けの内容ですが、極力専門用語は控えて作成していますので、多くの方に創の治り方を学ぶよい機会にしていただきたいです)
ただ、その前に、皮膚の構造が分かっていないと、創の深さに応じた創の治り方の違いや治療法の違いが理解できませんので、始めに皮膚の構造について簡単にお話しします。
目次
創の治り方に必須の知識 皮膚の構造~びらんと潰瘍の違い
1 皮膚の構造
創の治り方を知るためには皮膚の構造を知ることが必須となります。これを理解して、今の創がどの深さなのかをイメージしながら対処すると、創の治りやすさが格段に上昇します。
では、さっそく皮膚の断面をみてみましょう。
皮膚は断面にすると、表層から深層に向かって、表皮→真皮→皮下組織(部位によっては筋肉、腱、骨)という複数の層に分かれています。
創を治す観点からそれぞれの層の特徴をお話しします(表皮については最後に詳しくお話しします)。
真皮は主にコラーゲンでできていて、皮膚の構造を維持しています。そして、そのコラーゲンの中を血管や神経がめぐっています。ちなみに表皮には血管はありませんので、ケガをした際に出血したら少なくとも真皮を超える創、ということができます。
さらに真皮の中には、毛や汗管なども存在しており、実はこれらが、創の治りに大きく影響してくるのですが、その詳細は後程お話しします。
皮下組織は主に脂肪細胞でできていて、脂肪細胞はクッションとしての役割や栄養を蓄える貯蔵庫としての役割があります。痩せている方が褥瘡ができやすいのは、お尻のクッションである脂肪が減ってしまうことが一因です。
さらに、脂肪層の深部には筋膜・筋肉・腱や骨が存在します。
では、ここから、創が閉鎖するのにもっとも重要となる表皮についてお話しします。下図右側に表皮の拡大図を示します。
実は、表皮も上図右側のイラストのように最深部の基底層から最も表層の角質層までいくつかの層に分かれています。
ただ、これらの層は、先ほどの真皮や皮下組織と異なり、すべて同じ細胞からできています。これは、どういうことかといいますと、表皮はその最も最下層にある基底細胞がすべての表皮細胞を作っているのです。
基底細胞が次々と新しい表皮細胞を皮膚の表面に向けて作るため、表皮細胞は新しく作られた表皮細胞によって表層に押し上げられます。そして、次第に表層に近づく中で、有棘細胞から顆粒細胞へと変化し、最終的に角質細胞(いわゆる垢)に変わっていくのです(分化)。そして、最終的に、角質細胞は細胞同士の接着を失い剥がれ落ちます。この基底細胞で表皮細胞が作られ、分化し、角質細胞となり剥がれ落ちる過程がいわゆるターンオーバーです。
皮膚はこのターンオーバーにより、常に最新のバリアを維持することで、外界から細菌など異物の侵入を防いでいるのです。
では、皮膚の構造がある程度わかったところで、創の深さに応じた創の治り方や治療法についてお話しします。始めに、創を理解するうえで欠かせないびらんと潰瘍の違いについてお話しします。なぜこれらを分けて考えるかといいますと、びらんと潰瘍では治療法が大きく異なるのです。
2 びらんと潰瘍の違い
以下にびらんと潰瘍の違いをまとめます。
びらんと潰瘍の違い:欠損した皮膚に、表皮最下層の基底細胞が残っているかどうか
①基底細胞より上の層で欠損した場合:びらん
②基底細胞より下の層で欠損した場合:潰瘍
これをイラストにしてみますと、以下のようになります。
びらんは表皮を作る基底細胞が残っていますが、潰瘍では欠損していることが分かります。
では、このびらんと潰瘍によってどのように治り方や治療法が異なってくるのか、以下でご説明します
創の深さに応じた創の治り方とおすすめ治療法
では、ここからは実際の創の治り方をみてみましょう。創の深さを、びらん、浅い皮膚潰瘍、深い皮膚潰瘍、に分けて考えます。
話の都合上、①びらん、②深い皮膚潰瘍、③浅い皮膚潰瘍、の順番で説明します。
1、びらんの治り方とおすすめ治療法
1-1 びらんとは?
びらんとは前述のように、表皮を作る基底層より上の層での欠損です。
びらんを生じる原因としては、おむつかぶれや湿疹の掻き崩し、などが代表的です。創にへこみがなく、出血しない程度のじくじくした皮膚めくれをみたら、びらんと考えてよいかと思います。
1-1-2 びらんの治り方
次にびらんはどのようにして治るのかみてみます。びらんは前述のとおり表皮細胞を作る基底細胞が残っています(上イラスト右側の表皮拡大図を参照)。そのため、表皮細胞が欠損しても、基底細胞から速やかに表皮細胞が作られるため、適切な治療を行えば速やか(数日)に表皮が作られ改善します。
1-1-3 びらんの治療法
では、びらんにはどのような治療がすすめられるのでしょうか?
一言でいえば”創部を乾かすこと”です。
びらんは乾燥した環境の方が上皮細胞が形成されやすいです。そのため、明らかなびらんを生じる原因がない場合であれば、何もせず放置するだけで多くの場合治ります。
もし、積極的に治療するのであれば、亜鉛華軟膏の使用をお勧めします(湿疹の掻き崩しによるびらんであれば、ステロイド外用剤を1:1で混合して使用)。亜鉛華軟膏は水分を吸収し、創部を乾燥させる働きがあり、しかも、ある程度、排せつ物の刺激などから創部を守ってくれますので様々な原因によるびらんに対しても有効な治療と考えます。
ただ、ここでいくつかの注意点がありますので、以下にまとめます。
びらん治療の注意点
1 乾燥させるため間違えて亜鉛華単軟膏を選ばない(亜鉛華単軟膏は水分を吸収する作用がほとんどないためびらんには不向き)
2 ガーゼを貼る際は、メロリン®などのフィルムガーゼでは浸出液をとどめ乾燥しにくくなってしまうため、通常のガーゼや筒型包帯(チュビファースト®など)を使用する
3 びらんの原因として、細菌(とびひなど)や真菌(カンジダなど)のことがあり、その場合は適宜それぞれ抗菌剤や抗真菌の外用剤などによる治療が必要
4 排せつ物の刺激によるびらんの場合は排せつ物の刺激から守ることが第一選択
→別ページ(陰部~臀部の皮膚トラブル)参照
まとめますと、びらんは通常乾かすことで多くの場合数日で改善します。もし、改善しない場合は、潰瘍の可能性や感染症や排せつ物などなんらかのびらんを生じる悪化因子が皮膚に生じていたり、類天疱瘡などのびらんを形成する疾患が隠れている可能性もあります。
適切に対応しても1週間以内に改善しない場合は、皮膚科受診をご検討ください。
そして、このびらん=乾燥で治るということが大きな誤解を生じています。
びらんの多くは乾燥させれば治るため、あらゆる創は乾燥させれば治ると誤解している人が少なくない
※潰瘍は乾燥させると非常に治りにくくなる
このことを念頭におきながら、次に潰瘍の治療に話を進めていきます。
2、深い皮膚潰瘍の治り方とおすすめの治療法
では、つぎに潰瘍特に説明の便宜上、”深い潰瘍”について、お話しします。
深い潰瘍として代表的なのが、脂肪層を超える深さの褥瘡や3度熱傷などがあげられます。ただ、褥瘡などはある程度経験を積まないと、どのレベルの深さかを特定することは難しいです。
そのため、もっとシンプルに以下のように考えてよいと思います。
深い皮膚潰瘍≒壊死組織を伴う皮膚潰瘍
ただ、注意点としましては、褥瘡にしてもやけどにしても、創ができた直後には壊死組織はみられません。実は壊死した組織が見た目にはっきりと壊死組織だとわかるのに2週間ほどかかかるのです。
そのため、出来立ての創をみて、壊死組織がないからとハイドロサイトを貼るなどして、密封するような処置を行うと、思わぬ感染を合併することがありますので、要注意です。
できたての創は毎日観察して、壊死組織がどうかを確認していくことが、感染のリスクを減らすためにも大切です。
潰瘍になるとびらんとは異なり表皮を作る細胞である基底細胞が欠損しています(下図イラスト参照)。
つまり、そのままでは表皮を作ることができず、創はふさがりません。さらに、深い皮膚潰瘍では多くの場合壊死組織を伴っています。
では、このような創はどうやって治っていくのでしょうか?
STEP
壊死組織の除去
深い創は多くの場合壊死組織をともないます。
この壊死組織はそのままにしておくと、①創が治らない、②感染のリスクがある、という主に2つの問題があります。そのため、創を治すのには壊死組織や活性のない組織などを可能な限り素早く除去すること(デブリードマン)が大切です。
STEP
創の凹みを肉芽組織が埋める
十分に壊死組織や活性のない組織が除去されると、肉芽組織が増殖して欠損した部分を埋めていきます。
STEP
創の辺縁より皮膚が作られ創が治る
肉芽組織が皮膚の高さまで盛り上がると、創の辺縁の基底細胞が創の内側に増殖していく(上イラスト黄矢印)ことで上皮化していきます。
このようにして、深い創は治っていきます。ただ、それぞれの過程に非常に時間がかかるため、どんなに順調に改善しても創が治るのに1か月以上かかります。
さらに、これらSTEP1~3が順調に進むことはまずありません。多くの場合、どこかでつまずいて創の改善が止まってしまいます。
それは、全身状態の問題であったり、創部に圧迫やずれを生じていたり、ポケットができてしまったり、外用剤が不適切であったり、日々の処置に問題があったり…本当に様々なトラブルに悩まされます。
さらには、これらの問題が複合的に起こって難治化していることも少なくありません。
そのため、深い創が治らなくなった時、何が原因なのか分からず、しばしば路頭に迷ってしまいます。
これが、”褥瘡の治療は難しい…”、皆さんがそう実感する所以だと思います。
でも、安心してください。
深い創を治すための道標があるのです!
それが”TIMEコンセプト”という考え方です。
TIMEというのは創が治りにくくなっている4つの原因の頭文字をとったものです。それぞれを以下にお示しします。
最近では、このTIMEに、R(repair/regeneration:修復・再生)、S(social and patient-related factor:社会的・身体的要因)を加えて、TIMERSなどといわれるようになってきています(ただ、RとSについてはまだ、知見が少ないため、TIMEを中心にお話しします)。
創が治りにくくなった時、このTIME+α(全身状態や圧迫・ずれ)に問題があることがほとんどです。創の状態や生活環境、全身状態を総合的に判断して、どこに問題があるのかを考える習慣が大切となります。
そして、実は、このこれらのうTIME+α、一つでも解決できれば創が治るというわけではありません。実は…
深い褥瘡を治すためには”TIME+α(全身状態の改善、圧迫・ずれ)”すべての課題を解決する必要がある
深い創はこれだけ様々な関門をクリアしないと改善しない…これが多くの医療従事者が深い褥瘡で四苦八苦する原因だと思います。
では、それぞれをどのようにして解決していけばよいのでしょう?
以下に簡単に対策法の概略をお示しします。
ただ、このTIMEを実際に対策しようとすると、このような概略ではとても太刀打ちできません。
是非、超難関な深い褥瘡を攻略するため、褥瘡治療②以降で紹介していますTIMEそれぞれに対する治療法について十分知識を深めることをおすすめします。
実はそれぞれがなかなかのボリュームとなっています。それはいかに深い創を治すことが難しいかの裏返しです…
ただ、どれも非常に大切な内容ですので、是非褥瘡で苦しむ患者さんを救うためにも知識を深めていただけますと幸いです。
以上、深い潰瘍の対策法についてお話ししてきました。褥瘡改善への道がものすごく険しいことを感じて頂けたかと思います。そのため、私は”いかに深い褥瘡を作らないようにするか”、が最も大切だと考えています。それについて、最後のまとめに記載がありますので、ぜひここにもっとも力を注いで欲しいと思います。
3、浅い皮膚潰瘍の治り方とおすすめの治療法
では、最後に浅い皮膚潰瘍の治療法についてお話しします。
浅い皮膚潰瘍として代表的なのが、真皮レベルまでの褥瘡やスキンテア、などがあげられます。
ただ、深い創と同様に、創をみて真皮レベル、ということは難しいですので、以下のように考えてみてはいかがでしょうか。
浅い皮膚潰瘍≒壊死組織は伴わないが出血を伴う凹みのほとんどない創
浅い皮膚潰瘍を断面にすると以下のようになります。
先ほどお話しした深い皮膚潰瘍と同様、表皮を作る基底細胞はなくなっています。”これでは深い皮膚潰瘍と同じではないか?”と考えてしまいますが、実は大きく異なるところがあります。
それは、実は浅い皮膚潰瘍では基底細胞に変わりうる細胞が残っている!、ということです。
それは何なのか?以下のイラストにお示しします。
じつは、毛を包む皮膚や汗の管は基底層の基底細胞に変わりうるのです!毛や汗の管は真皮の深層~脂肪組織まで存在しています。そのため、浅い皮膚潰瘍ではそれら基底細胞に変わりうる細胞が残存しているのです。
皆さんご存じのように皮膚には多数の汗の管も毛も存在します。そのため、浅い皮膚潰瘍ではそれらが、基底細胞を作り、そこから皮膚が形成されるため、多くは2~4週間ほどで速やかに皮膚が作られるのです。
ただ、ここで注意点があります。それは
浅い皮膚潰瘍において、毛の周りの皮膚や汗の管から表皮が作られるためには、湿潤環境を維持することが大切!
→浅い皮膚潰瘍を乾燥させると、創部が砂漠化してしまうことで、毛の周りの皮膚や汗の管から表皮は作られず、治りにくい創になってしまう
ということです。 では、どのようにして創部を湿潤環境にすればよいでしょうか? その方法は大きく分けて2つあります。
これら2つの方法についての詳細は、上記の下線をクリックしていただければ、別サイトに詳細な方法が載っていますので参考にしてみてください。
そして、ここまでお話ししてお気づきと思いますが、"創を乾燥させれば改善するびらん"とは、治療法が真逆になってしまうのです!
そのため、びらんと皮膚潰瘍を見分けることが非常に大切ですが、やっかいなことに、特に浅い創では、びらんと皮膚潰瘍を見分けることが難しいことが少なくないのです。特に擦り傷のようなほとんど創に凹みのない皮膚めくれは見分けが難しいです。
これはあくまでも私見ですが、以下のようにしてびらんと潰瘍を見分けるとよいと思います
びらんと皮膚潰瘍の見分けるポイント
①褥瘡、外傷、熱傷、など物理的な刺激による創は潰瘍の可能性が高い
②湿疹を掻き潰したり、おむつかぶれなど、湿疹の延長にある変化はびらんであることが多い
③出血を伴えば潰瘍
これはあくまでも個人的な経験に基づく見分け方ですが、一つの参考に、びらんと潰瘍を見分けて、乾燥させればよいのか湿潤環境が良いのか、治療方針を決めてみてはいかがでしょうか?
それでもどちらか判断が難しい場合は、少なくとも潰瘍は乾燥させたくありませんので、まずは塗り薬や創傷被覆材で湿潤環境を維持するところから対策するとよいかと思います。
まとめ 褥瘡対策で最も大切なこと
では、最後に、びらん、浅い皮膚潰瘍、、深い皮膚潰瘍の治療方法についてまとめます。
びらん:亜鉛華軟膏などで創部を乾燥させる
浅い皮膚潰瘍:塗り薬や創傷被覆材で適度な湿潤環境を維持する
深い皮膚潰瘍:TIME+α(全身状態、圧迫・ずれ)への対策を行う
ここまでお話しして気づきましたでしょうか?
創というのは深くなればなるほど、加速度的に治りにくくなる
→"深い創を作らない対策”、を行うことが非常に大切
では、どのような対策をすれば深い創を予防することができるのでしょうか?
褥瘡が発生する原因には、圧迫やずれ、皮膚周囲の蒸れなど、様々な原因があります。
その中で深い褥瘡の発生により影響を与えているのが、”持続的な強い圧迫とずれ力”、だと考えられています。特に、表皮や真皮に比べてより柔らかい脂肪や筋肉は強い圧迫により簡単に潰れてしまうため、突出した骨の周りを中心に壊死しやすくなっていると考えられます(以下のイラスト参照)。
では、深い褥瘡を作らないため、いかにして持続的な強い圧迫やずれ力の対策を行えばよいでしょうか?
そのためには、以下のような対策が有効ではないかと考えています。
深い皮膚潰瘍を作らないための”持続的な強い圧迫”や”ずれ力”に対する予防法
1 ”持続的な強い圧迫”の予防
①寝返りを打てない患者さんに早期に褥瘡予防効果の高い適切なエアマットを導入
→詳細は別ページ"エアマットの適切な選び方"参照
2 ”ずれ力”への対策
①長期のギャッチアップを避ける(可能な限り30度以下1時間以内のギャッチアップにとどめる)
②ベッド上での背上げと背下げの後で背抜きを行い、ずれを解消する
→2-①~2-②について詳細は別ページ"寝姿勢+ポジショニングについて学ぼう!"参照
③体位変換(ただ、在宅での高頻度での体位変換は難しい)
→詳細は別ページ”在宅でも負担の少ない体位変換を考えよう!"参照
それぞれの対策法についての詳細は別ページに載っていますので、深い褥瘡発生を減らすためにも参考にしてください。
ここでは、特に在宅患者さんにおいて、私が個人的に深い褥瘡予防として最も大切だと考えている、寝返りを打てない患者さんへの早期の適切なエアマット導入について、少しだけ補足します。
患者さんは動けなくなれば、早ければ、たった数時間で褥瘡が発生してしまいます。
いかに、患者さんが動けなくなっている(ベッド上で寝返りを打てない)ということに素早く気づき、早期に対策を行うことが深い褥瘡を作らないために非常に大切になります。
ただ、特に在宅の患者さんでは、老々介護のご家庭も多く、体位変換をこまめに行うことは難しいです。そのため、在宅で動けない患者さんに早期に適切なエアマット、を周知徹底していくことが最重要だと考えています。実際、これは私の経験ではありますが、早期に適切なエアマットを導入できた患者さんで、深い褥瘡が発生した例はほとんどありません。
ただ、ここで注意すべきは、一口にエアマットといっても、実は数多くの種類があり、それぞれに個性があります。
患者さんに適したエアマットを選ぶことも非常に大切になります。では、どのようにエアマットを選べばよいか、そのためにはいくつかのポイントを押さえて選択することが大切だと考えています。
これも、あくまでも個人的な意見にはなりますが、選択法の一つの指針を別ページに掲載していますので、参考にしていただき、患者さんが快適で褥瘡のない生活の手助けにしてください。
褥瘡予防編 エアマットの適切な選び方
以上、創の深さに応じた対策法についてお話してきました。
次章からは、今回取り上げました深い褥瘡に対して必須の知識である”TIME+α”それぞれの詳細や対処法、さらには個人的に特におすすめします塗り薬・創傷被覆材の使い分けや使い方についてお話します。