まもりさん”寝返りを打てなくなったらすぐにエアマット”、これが褥瘡対策の最優先事項なのですね!



前回の内容よく理解できました!



でも、エアマットってどれも似たりよったりですよね



実は同じようにみえるエアマットもかなり個性があるのです!



えっ



それぞれの患者さんに適切に選ばないと、さまざまなトラブルを生じてしまうこともあるのです!
前回お話ししました、褥瘡対策で私が最も大切だと考えていることを復唱します。
寝返りを打てなくなったら可能な限り早急(できれば気づいた当日中)に適切なエアマットを導入する
ここでポイントとなるのが、患者さんに応じた”適切なエアマットを選ぶ”ということです。今回は全てのお話の中でも超重要ポイントである、”エアマット選びのポイント”についてお話しします。エアマット選びを適切に行うことで、深い褥瘡の発生を大きく減らせる可能性があります。
※1もちろん栄養管理や体位変換など、他のケアとの組み合わせも大切です。
※2寝返りを打てないのを気づいた際には、エアマット選びとともに臀部や踵などの褥瘡の有無を確認することも大切です。以下のサインがあるときは、寝具の調整と共に主治医や皮膚・創傷の担当へ早めに相談してください
・押しても色が戻らない赤み/紫っぽい変色
・水ぶくれ、皮むけ、黒っぽい部分
・痛みが強い、急に腫れる、熱っぽい
・膿、悪臭、発熱、急に元気がない
ちなみに、最後のまとめにエアマット選びのフローチャート(私見)がありますので、そちらのみを知りたい場合はまとめをご確認ください。
目次
エアマットの特徴
前回、エアマットはエアセルという空気の袋が凹んだり膨らんだり繰り返すことで、同じところに圧が集中し続けにくくなるので、褥瘡予防の助けになることが多い、というお話をしました。


ただ、実は、エアマットの構造はメーカーや種類によってかなり違いがあります。次の章で、エアマットによってどのような特徴があるのか、実際よく使われる2つのエアマットを比較してみます。
エアマットの比較(オスカー® vs ビッグセルアイズ®)
では、よく使われるオスカー®とビッグセルアイズ®の構造の違いを見てみましょう。
以下にそれぞれのエアマットの断面をお示しします。


オスカー®(イラストの左側)のマットの厚みは17㎝ですが、イラストをみていただくとわかりますように、実際に膨張収縮するエアセルは上の半分だけで、下半分のエアーは膨らみっぱなしです。したがって、エアセルに厚みがそれほどないため、エアセルが縮小しても隣接した膨らんでいるエアセルとの高低差が少ないです(赤矢印)。すると、痩せている方の仙骨などの突出部ではエアセルが収縮しても圧迫が持続しやすく、褥瘡発生リスクを軽減しにくくなる可能性があると考えられます。
一方でビッグセルアイズ(イラストの右側)はマットの厚みが15㎝ですが、厚み分ほぼ全てがエアセルであるため、エアセルが収縮した際に周囲の膨らんでいるエアセルとの間で十分な段差ができます(赤矢印)。
そのため、エアセルが凹んだ際に持続的圧迫は解消されやすく、骨突出が強い方でも圧を逃がしやすいと考えられます。
このように同じエアマットでも構造はかなり異なっていることがわかります。
では、このように構造に違いが大きいエアマットを、どのようにして選べばよいのでしょうか?
私は以下の点を最も重視してエアマットを選んでいます。
”褥瘡発生リスクの高い患者さんや発生した褥瘡治療の観点からは、エアセルにより厚みがあるエアマットを選ぶ”(私見)
・寝返りが打てない以外の褥瘡発生リスクが高い患者さん(私見)
①拘縮がある
②30度以上の背上げを1.5時間以上行う(※Kim SY, et al. Int J Environ Res Public Health. 2021.)
③痩せていて骨突出が著明
※エアマット選びには褥瘡発生リスク以外にも、ずれ対策・蒸れ対策・転倒リスク・介助のしやすさも併せて検討することも大切です
エアマットの褥瘡予防として最も大切な役割は”定期的に十分圧を逃がすこと”で、その十分な除圧に最も寄与するのが、”エアセルの厚み”と考えています(私見)。つまり、先ほどのビッグセルアイズのようにエアセルが厚い方が、エアセル収縮時に十分除圧できるため、そこで血流が回復し、褥瘡予防にも発生した褥瘡の改善にも貢献できるのです。
ただ、実はエアセルが厚いエアマットは、寝心地が悪くなる可能性があります(最近のエアマットはこの点はかなり改善されてきています)。
エアマットは実際に使用しないと、本人との相性は分からないため、まずは数日お試しして、本人の眠り・痛み・落ち着き(せん妄っぽさ)が変わっていないかも一緒に見て、褥瘡予防とのバランスで選ぶのが大切です。
では、実際に、具体的なエアマット選びのポイントについてお話ししていきます。
エアマット選びのポイント
1,寝返りは打てないが自立で座位になれる場合
サルコペニア(加齢などによる筋肉量の減少・筋力低下)などで次第に動きが減ってきていて、自立座位やつかまり立ちなどはできますが、実は寝返りは打てなくなっている患者さんは少なくありません。
'うちのお父さん、まだ自分で起き上がれるし大丈夫'と思っていたら、実は寝返りが打てなくなっていた――これ、現場ではよくある話です。そのような患者さんでも褥瘡を生じることがあるため、可能であれば早期のエアマット導入を検討したいところです。ただ、エアマットは沈み込むため、座位で不安定になることがあり転倒のリスクがあります。
※エアマットの導入直後は、起き上がりや立ち上がりの場面だけでも一度“動き”を確認して、必要なら見守りや手すり位置を調整します。


ただ、最近のエアマットは坐位で不安定になりにくい工夫がなされており、適切なエアマットを選べば”自力で坐位になれるからエアマットは使用できない”、という時代でなくなってきています。
そこで、例えばここちあ利楽flow®は、坐位になることを自動で検知してエアマットが硬くなる機能があります。それ以外でも、ほとんどのエアマットにはリモコンでエアマットを硬くでき転倒対策を行っています。


その他、先ほど登場したオスカー®は縁のみウレタンフォームでできているため、転倒リスクを軽減しています。ただ、さきほど説明しましたようにエアセルの厚みはあまりありませんので、褥瘡発生リスクが高い患者さんには向かないことがあります。そのためオスカーの適応は、骨突出が軽度であり、長時間(目安は1.5時間)の30度を超えるギャッチアップは行わない、さらに拘縮もない患者さんになると思われます(私見)。
ちなみに、オスカーにはもう一つ、自動体位変換機能という機能があり、この是非について考えてみましょう。
1(補足) 自動体位変換機能は本当に必要なのか??


実は、この自動体位変換機能には賛否両論ありますので、個人的な見解を述べさせていただきます。
自動体位変換機能の是非(私見と参考文献による)
・定期的に体を強制的に傾かされるため、患者さんの寝心地が悪く、QOLが低下する可能性(30度以上の自動体位変換で不快感を増したという報告あり ※J Phys Ther Sci. 2016 Feb 29;28(2):460–466)
・傾けすぎる(30度以上)と大転子部の圧が高まる可能性(※Adv Skin Wound Care. 2026 Feb 13;39(2):73–79. )
以上のことから、あくまでも自動体位変換はそれのみで体位変換の代用と考えるのではなくて、人によるポジショニングが難しい場面の補助として活用する。しかも、自動体位変換は傾けすぎないことが大切、と思われます(私見)。
これらのデメリットを解消すべく、エアマットの中にはラグーナ®やここちあ利楽flowのようなスモールチェンジ機能(後述)といって、軽い側臥位にするような機能を有するエアマットもありますが、まだ、褥瘡予防に対する高いレベルで有効とまではいえないのが現状と思われます。
2,自力で座位になれない+褥瘡発生(-)、拘縮(-)、長期間の30度以上のギャッチアップ(-)場合
自力で座位になれず、寝返りを打てない上に、褥瘡発生(-)、拘縮(-)、長期間の30度以上のギャッチアップ(-)の場合は、寝心地と除圧性能がバランスの取れたエアマットがおすすめです。
個人的におすすめなのは、ネクサスIB®とここちあ利楽flow®です。
ネクサスIBはエアセルの厚みが10㎝以上あり、痩せている方でも除圧しやすい上に、背上げ時のずれ対策やモニターに背上げの持続時間が表示されるため、褥瘡リスクの一つである長時間の背上げへの対策も容易です
※基本的に30度以上の背上げは2時間までが推奨されています(※Kim SY, et al. Int J Environ Res Public Health. 2021.)
さらに、近年注目されている褥瘡原因の一つマイクロクライメット(皮膚が蒸れにより脆弱化したりずれ力が増すことで褥瘡発生のリスクが増すこと)への対策として、マット内で空気を循環させ蒸れを防ぐ機能も備わっています。


ここちあ利楽flowは先ほども説明しましたようにエアセルに十分厚みがあるとともに、もう一つ独自の機能があります。それはスモールフロー機能です。


スモールフロー機能は上のイラスト右側に示しますように、通常のエアセルのさらに下の層に縦長のエアセルが体の四方に組み込まれています。それらエアセルの膨らみや縮みによる違和感を与えにくい小さな体位変換で、同じ部位に圧力がかかり続けることを予防します。また手足の緊張感の軽減にもつながると考えられています。
3,自力で座位になれない+以下の一つでもあてはまる場合
□褥瘡発生、□拘縮、□30度以上のギャッチアップを1.5時間以上続ける
上記チェック事項に一つでもあてはまる場合は、定期的に十分な除圧をしないと、褥瘡発生のリスクが高いですし、すでに発生した褥瘡がある場合は治りにくくなる可能性があります。
そこでおすすめなのが”ビッグセルアイズ”です。


なぜビッグセルアイズがおすすめか、それは冒頭でもお話ししましたように”エアセルに国内でもトップクラスの厚みがある”ということです。このエアセルの厚みにより、エアセル収縮時に十分な除圧ができるため、拘縮していたり骨突出が強い患者さんでも、褥瘡発生リスクをより減らせますし、さらに褥瘡発生部位への圧迫が減ればより改善しやすいと考えています。
さらに、”30度以上のギャッチアップを行うかどうか”、もエアマット選びを考える上で、非常に大切なポイントとなりますので以下で深堀りします。
3(補足)30度以上背上げする際の落とし穴
実は、エアマット選びにおいて、“30度以上の背上げをどのくらいの時間行うか”が非常に重要になります。
なぜこれが重要かといいますと、30度以上背上げをしますと、臀部にかなりの圧がかかります。そのため、それほどエアセルに厚みのないエアマットでは、エアセル収縮時に臀部がベッド底の固いフレームで圧迫される可能性があります。その対策として、エアセルに厚みのないエアマットは30度以上背上げをすると、臀部のエアセルを膨らみっぱなしにして、底付き予防しているのです。しかし、もし長時間背上げを続ければ、持続的圧迫につながり、さらに背上げによりずれを生じていることもあり、褥瘡リスクが非常に高まってしまうのです。


これらの理由から、褥瘡の観点では、30度以上の背上げが長時間続くほど臀部の負担が増えやすいです。可能なら、食事やケアの後に角度を少し戻す(可能な限り背上げ角度は30度未満)ことを検討します。
※ただし、誤嚥予防や呼吸状態などで背上げが必要なときは、そちらが優先になることもあります。迷ったら主治医と相談しましょう。
ただ、テレビを見たい、食事に非常に時間がかかる、など在宅の現場では長期間の背上げが続いているケースも少なくありません。


そこで、30度以上の背上げを1.5時間以上行う方にはビッグセルアイズ®がすすめられます。前述のとおりビッグセルアイズ®はエアセルに非常に厚みがあるため、30度以上背上げをしても底付きしにくい構造になっています。そのため、30度以上の背上げでも臀部のエアセルは収縮が可能で、臀部にかかる圧迫をより軽減しやすくなり、褥瘡リスクを減らすことが期待できます(先ほど説明しましたネクサスIBやここちあ利楽flowにも同様の機能がありますがビッグセルアイズの方がエアセルに厚みがあるため褥瘡発生リスクが高い方にはより有用と考えます)。
※ただし、30度以上の背上げはビッグセルアイズを使用していても2時間以内に抑えることが無難と思われます(2時間以上背上げにおける褥瘡予防を実証したのデータがないため)。


まとめ(エアマットの選び方のフローチャート)
最後に、エアマット選びにはかなり抑えるポイントが多く、頭が整理しにくいと思いますので、今までの内容をふまえ、患者さんの状態ごとにどのようにエアマットの選べばよいかフローチャートを示します。


※このフローチャートはあくまでも個人的な考えであることご容赦ください。
褥瘡予防の中でも適切なエアマット選びは、ご本人を守るだけでなく、介護する皆さんの負担を大幅に減らすことができる、在宅医療では必須の知識だと思います。
このフローチャートが、適切なエアマット選びの一助になれば幸いです。
次回はこのように適切なエアマットを使用しても発生しうる踵褥瘡についてのお話しです。なぜ、エアマットを使用していても発生しうるのか、どのように対策すればよいのか、についてお話しします。