まもりさん先生、患者さんの足が曲がって固まってきました…
しかも痛がって、体位変換も難しくなってきて



足をほとんど動かせない患者さんの拘縮を十分に予防するのはとても難しいです
まずは理学療法士に対策法を相談しましょう!



ただ、訪問診療では十分な介入が難しいことありますよね



拘縮が進むと 痛くて動かさないからさらに拘縮悪化、のループに入りやすいです。
でも、在宅でも“できる範囲で進行を遅らせる”打ち手はあります。
患者さんが麻痺などで関節を動かさなくなると、筋肉・腱・靭帯などが固くなってしまいます。
これを拘縮といいます。
拘縮を生じると以下のように生活で様々な問題を生じます。
拘縮で何が困るのか?
・オムツ交換が大変
・着替えがしにくい
・痛みが出る
・体の向きを変えづらい
・褥瘡リスクも増加
さらに、一度進行した拘縮は元に戻すのが難しいことが多いです。そのため、気づいたら早めに理学療法士に相談してください(発症して間もない段階なら、よくなっていく余地があることもあります)。
"予防が最大の治療"――これは拘縮にもぴったり当てはまる言葉です。
そこで、実際の拘縮予防において効果がある程度証明されている方法を以下に示します。
主な拘縮予防法
1、関節をやさしく動かす
2.姿勢を整える(ここが実はいちばん大事)
3.足首と踵(かかと)は特に注意
4.可能なら「立つ時間」をつくる
ただ、この在宅での拘縮予防は一筋縄にはいきません。
拘縮対策の基本は1の関節をやさしく動かす(専門的には他動的関節可動域訓練といいます)ことだと考えられていますが、単独が拘縮を確実に予防できるかは「まだはっきりしない」という整理もあります(※Cochrane Database Syst Rev. 2013 Dec 28;2013(12))。
また、いわゆる「ストレッチ(伸ばしっぱなし)」も、拘縮予防としては効果が小さい/不確実という報告もあります(※Harvey LA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017.)。
これらの現状をふまえて、実際にどのように拘縮予防を生活に落とし込んでいけばよいか考えてみます。
※※皮膚科医にとって拘縮は専門外の領域です。今回のお話は学会や医学書などを参考に、実際の医療現場で私が試行錯誤した経験をもとにしたもので、あくまで個人的な考えです。その点はご了承ください。
目次
拘縮の対策法 その1 股関節・膝関節の曲げ伸ばし
動くことが難しい患者さんでは、拘縮対策の基本は関節を“痛みのない範囲で”ゆっくり動かすことです。
※ただし、痛みや腫れ、術後などはやり方が変わるので、まずはリハ職に確認しましょう。
これを、他動的関節可動域訓練(パッシブレンジオブモーション:以降PROM)といいます。PROMとは患者さんの関節を自然に動く範囲内でゆっくりと動かしてあげることで、関節の柔軟性を保ち、拘縮を予防します。
この方法は、ご家族・介護職の方が行う場合は、最初に理学療法士からやり方を教わってからが安心です。痛みが出る動きは避けて、無理はしないのがコツです。
1-1 他動的関節可動域訓練(PROM)の方法
では、実際にPROMはどのようにして行うのかみてみましょう 以下に、杏林大学が監修した下肢の拘縮予防訓練法について、動画が非常にわかりやすいのでお示しします。
このように、股関節・膝関節をゆっくり曲げ伸ばしを行い、痛みの出ない範囲で、股関節と膝関節をできるだけ曲げた状態を10秒以上キープすることで、拘縮を予防していきます。
回数は左右5回×1日2〜3セットが目安です。皆さんが行うストレッチと同じで、朝・昼・夕方など時間を分けて行うとより効果的です。
ただ、「毎日3セットできない…」は普通です。ゼロより1回が勝ちます。
この"ちょっとの曲げ伸ばし"の積み重ねが、あとあと大きな違いになります。
1-2 他動的関節可動域訓練(PROM)の注意点


PROMは拘縮予防として有効な方法ですが、いくつかの注意点があります。
PROMの注意点
・痛みがある/腫れがある/術後は、やり方が変わる(まずリハ職へ)
・痛みが出る動きはやらない(表情・防御反応で察知)
・人工骨頭(股関節)などは脱臼リスクあり → 不明なら実施しない
・骨粗鬆が強い場合、無理な力で骨折のリスク → 力加減に不安があればPTへ
特に③は要注意ですので、行う前に手術歴がないかを確認しましょう。
股関節の手術歴がなく、上記の注意点にも当てはまらなければ、必ずしも医療従事者でなくても行えます。ただ、慣れないうちは理学療法士に十分なレクチャーを受けてから開始すると安心だと思います。
ぜひ、積極的に導入していただき、拘縮対策していきましょう!
拘縮の対策法 その2 適切なポジショニングと定期的な体位変換
現実的に長期臥床の患者さんは関節を「動かす時間」よりも「動かさない時間」のほうが圧倒的に長いです。
そして、同じ姿勢が長時間続くと、筋肉は縮むほうへ進み、関節は「その角度が普通」と学習することで拘縮が進行します。
だらかこそ
・体の向きをときどき変える
・ねじれた姿勢を長時間続けない
・楽な姿勢を保てるようクッションを使う、これらがとても重要です。
そして、これらは拘縮予防だけでなく、褥瘡予防にもなり一石二鳥です!
2-1 適切なポジショニング


はじめに押さえておくポイントは“姿勢”です。
特に拘縮を生じやすい患者さんは、自身での体動が難しいことが多いですので、心地よい姿勢(適切なポジショニング)を維持してあげることがとても大切です。
ポジショニングのくわしいポイントは、以下の別ページで解説しています。そちらの第1〜2章を参考にしてみてください。
寝姿勢+ポジショニングについて学ぼう!
2-2 定期的な体位変換


体位変換は、褥瘡だけでなく拘縮にも有効です。
ただし在宅ではマンパワーが限られるので、“理想の頻度”より“続く仕組み”**が最優先です。
この内容につきましては、以下のページでお話ししていますので、参考にしてください。
在宅でも負担の少ない体位変換を考えよう!
拘縮の対策法 その3
拘縮対策に有用と考えられる介護用品 2選
定期的な体位変換は有用な方法ですが、特に在宅で十分に行うことは難しいことが少なくありません。
そこで、拘縮予防に有効な可能性がある介護用品を利用することも重要な選択肢となります。
今回はその中でもおすすめ2選をご紹介します。
3ー1 ここちあ利楽flow
おすすめの介護用品一つ目はここちあ利楽flowです。エアマットの一つです。 このエアマットの特徴を下の図に示します。


ここちあ利楽flowには通常のエアセルのさらに下の層に、上の図左側のイラストのように縦長の湾曲した4つのエアセルが備えられています。
この縦長のエアセルが患者さんを不快にしない程度に、順番に収縮膨張を繰り返すことで、同一部位の持続的圧迫の軽減につながるとともに、その圧迫をもとに戻そうとする反発力(姿勢反射)が生まれ、それが拘縮の進行を抑制すると考えられています。そのため、ある程度体位変換を代替できると考えられます。
では、どのような患者さんにここちあ利楽が良い適応になるか示します。
ここちあ利楽flowのよい適応
①麻痺や筋力低下などで腕や足を自分で動かせない
②在宅などでマンパワーが少なく体位変換を十分には行えない
上記を満たすような患者さんには積極的に使用することをおすすめします。
ただ、これはあくまでも個人的感想ですが、褥瘡予防としてのエアマットとしては、ビッグセルアイズのようなエアセルにより厚みのあるエアマットがより優れている可能性があり、これらの選択は患者さんの状態により変えていく必要があると思います(このあたりはエアマットの選び方を参照してください)。
3ー2 フットレストの使用
拘縮対策、おすすめの介護用品二つ目はフットレストです。 フットレストはシーホネンス社が介護用ベッド(emi笑)と共に販売している看護用品です。そのためこのフットレストはシーホネンス社の介護用ベッド専用になります(他社の介護用ベッドには取り付けできないようです)。


この介護用ベッドには上写真の左側赤い丸で囲っているように足底に密着するフットレストを装着できます。
このフットレストを導入することで、足底が安定します。そうすると、この写真のようにギャッチアップした際なども姿勢が安定しやすくなり、筋肉の緊張がやわらぐことがあります。その結果、拘縮対策の助けになる場合があります。
さらに、このフットレストの優れているところはアームの長さや角度を変化できるため、足の長さが異なる様々な患者さんに対応できる、ということです。
今までも足の安定のために枕などを足底に当てることがありました。枕やクッションでも工夫できることはありますが、ずれやすく、安定しにくいことがあります。安定しないときの選択肢として、フットレストを検討する流れが分かりやすいです。


また、上記写真のように踵の褥瘡予防として下肢の下にクッションを入れる際、足関節が底屈(つま先立ちの状態)になってしまいそのまま拘縮してしまうリスクがあります。フットレストを導入すればこの予防にも役立ちます。


さらに拘縮から脇道にそれますが、シーホネンス社の介護用ベッドは3モーターになっていて、頭部の角度も調整できます(上写真右側)。そのため、背上げの角度をそれほど高くしなくても、頭部の角度を調整することで、頭部が安定し、食事しやすくなるメリットもあります。
これは背上げ時に角度をつけることが発症リスクとなる尾骨部褥瘡の予防などにも役立ちます。
※ただ、それでも30度以上の背上げは、2時間以内にとどめることが無難です。
フットレストのよい適応
①麻痺などで足を動かせない
②長時間(1.5時間以上)背上げする(ただし、背上げ時間は可能な限り2時間まで)
ただ、このようにメリットも多いフットレストですが、デメリットもあります。それは価格が高い、ということです。基本的に介護保険の適応になりますが、介護用ベッドとフットレストをレンタルすれば1,500円ほどかかるため、ケアプランの見直しが必要になるケースも考えられます。
まとめ
以上、拘縮予防についてお話ししてきました。では、最後にまとめです。
拘縮予防のまとめ
・体を動かせないと拘縮を生じるリスクがある
・対策法として
①関節可動域訓練が基本
②患者さんが心地よい姿勢を維持するため、ポジショニングや体位変換も大切
③拘縮対策に有用と考えられる介護用品を利用する
これらの対策を駆使して、是非とも褥瘡発生ゼロとともに拘縮発生ゼロを目指しましょう!