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拘縮は苦痛のサイン? どうしたら拘縮も防げるか!?

まもりさん

先生、患者さんの足が曲がって固まってきました…

S先生

足をほとんど動かせない患者さんの拘縮を十分に予防するのはとても難しいです
まずは理学療法士に対策法を相談しましょう!

まもりさん

ただ、訪問診療では十分な介入が難しいことありますよね

S先生

確かに…
ただ、それでも対策できる方法が実はいくつかあるんです!

患者さんが麻痺などで関節を動かさなくなると、筋肉・腱・靭帯などが固くなってしまいます。
これを拘縮といいます。
拘縮の最大の原因は関節を動かさないことですので、麻痺などで動けない患者さんが拘縮してしまうのは自然の摂理、なのかもしれません。
ただ、拘縮を生じた関節を無理に動かすと痛を伴う上に、姿勢の安定やポジショニングも困難になるなど、大幅にQOLが低下します。そして、ひとたび進行した拘縮は治すことが非常に難しいです(ただ、拘縮発症間もない段階では改善の余地がありますので、まずは理学療法士にご相談ください)。
そのため、未然の対策が非常に大切です。
対策としては、理学療法士などが定期的に関節の曲げ伸ばしを行うことが推奨されますが、特に訪問診療では十分頻回に行うことは現実的に難しいです
そこで、それ以外の方法も併せて行い、少しでも拘縮の進行を遅らせる工夫が必要になると思います。
今回は特に訪問診療において、拘縮の進行を遅らせるための方法をいくつかご紹介したいと思います。

※皮膚科医は決して拘縮は専門領域ではありません。今回のお話しは学会や医学書などを参考に、実際の医療現場で私が試行錯誤した経験に基づいてのお話しで、あくまでも個人的な考えですのでご了承ください。
目次

拘縮の対策法 その1 股関節・膝関節の曲げ伸ばし

動くことが難しい患者さんの拘縮を予防する最も有効な方法は、やはり定期的に関節を動かしてあげることです。
これを、他動的関節可動域訓練(パッシブレンジオブモーション:以降PROM)といいます。
患者さんの関節を自然に動く範囲内でゆっくりと動かしてあげることで、関節の柔軟性を保ち、拘縮を予防します。
この方法の最大のメリットは、効果が高いことはもちろん、以下にお示しします注意点を守りながら行えばご家族や介護士などでもある程度安全に行うことができる、ということです。
ぜひ、足を動かさない患者さんには積極的に導入を検討してもらえればと思います。

1-1 他動的関節可動域訓練(PROM)の方法

では、実際にPROMはどのようにして行うのかみてみましょう
以下に、杏林大学が監修した下肢の拘縮予防訓練法について、動画が非常にわかりやすいのでお示しします。
このように、股関節・膝関節をゆっくり曲げ伸ばしを行い、痛みがない最大限に股関節と膝関節を曲げた状態を10秒以上維持することで、拘縮を予防していきます。

1回のPROMで左右5回ずつ、1日2~3セット行うことが推奨されます。

ただ、特に居宅では、定期的に施術を行えるほどのマンパワーがないことも少なくありません。
できる限りの回数を行うだけでも、全く行わないよりは拘縮の進行予防になることが期待されますので、是非、これからお話しする注意点に気を付けつつ、積極的に取り入れていただければと思います

1-2 他動的関節可動域訓練(PROM)の注意点

PROMは拘縮予防として有効な方法ですが、いくつかの注意点があります。
PROMの注意点
1 すでに拘縮がみられたり関節の疾患があると関節を動かすことで痛みを生じる可能性がある(話せない患者さんでは顔の表情や防御反応(関節を硬くする)などで痛みを察知)
2 痛みや不快感を生じにくいように、痛みがなくスムーズに動かせる範囲での屈伸にとどめる
3 股関節に人工骨頭が入っている場合には、過度の屈曲などで人工骨頭が外れてしまう恐れがある→整形外科医や理学療法士の指示に従い、分からない場合はPROMを行わない
特に③は要注意ですので、行う前に手術歴がないかを確認しましょう。

手術歴がなければ、この施術は必ずしも医療従事者が行うべきものではありませんので、施術を行ってもよいと思います。ただ、慣れないうちは理学療法士に十分なレクチャーを受けてから開始すると安心だと思います。
ぜひ、積極的に導入していただき、拘縮対策していきましょう!

拘縮の対策法 その2 適切なポジショニングと定期的な体位変換

先ほどのPROMは大変有効な方法ですが、定期的に行うことが難しいケースも多々あります。そのため、それ以外の対策法も知っておく必要があります。
関節を動かすこと以外の対策法の一つに、”患者さんが心地よい姿勢を保持する”、ということがあげられます。
なぜ、心地よい姿勢が大切かといいますと、もし、不快な姿勢が長時間続くと、筋肉の疲労や緊張が生じやすくなります。この状態が持続すると、筋肉の硬直や拘縮につながる可能性があるのです。

そのため、常に患者さんが心地よい姿勢であることも大切になります。
では、ここからは、患者さんが心地よく姿勢を保持してもらうための方法をいくつかご紹介します。

2-1 適切なポジショニング

始めに抑えておくポイントは”姿勢”です。
特に拘縮を生じやすい患者さんは、自身での体動が難しいことが多いですので、いかに心地よい姿勢(適切なポジショニング)を維持することが必須です。
では、どのようにして患者さんが心地よいポジショニングを行うか、そのポイントについては以下のページでお話ししました。その中の第1~2章を参考にしてみてください。

寝姿勢+ポジショニングについて学ぼう!

2-2 定期的な体位変換

寝たきりの患者さんは、前述のように、長時間同じ姿勢を続けると拘縮のリスクが高まります。そのため、定期的に体位を変えることで、持続的な圧迫を解除して、筋肉や関節の拘縮を予防することもポジショニングと同様に大切です。

そこで、どのように、どのくらいの頻度で体位変換を行うか、を知ることも非常に大切になります。
この内容につきましては、以下のページでお話ししていますので、参考にしてください。

在宅でも負担の少ない体位変換を考えよう!

拘縮の対策法 その3 拘縮対策に有用と考えられる介護用品の利用

2-3 拘縮対策に有用と考えられる介護用品 2選

定期的な体位変換は有用な方法ですが、特に在宅で十分に行うことは難しいことが少なくありません。
そこで、拘縮予防に有効な介護用品を利用することも重要な選択肢となります。
今回はその中でもおすすめ2選をご紹介します。

2-3-1 ここちあ利楽flow

おすすめの介護用品一つ目はここちあ利楽flowです。エアマットの一つです。
このエアマットの特徴を下の図に示します。
ここちあ利楽flowには通常のエアセルのさらに下の層に、上の図左側のイラストのように縦長の湾曲した4つのエアセルが備えられています。
この縦長のエアセルが患者さんを不快にしない程度に、順番に収縮膨張を繰り返すことで、同一部位の持続的圧迫の軽減につながるとともに、その圧迫をもとに戻そうとする反発力(姿勢反射)が生まれ、それが拘縮の進行を抑制すると考えられています。そのため、ある程度体位変換を代替できると考えられます。
では、どのような患者さんにここちあ利楽が良い適応になるか示します。
ここちあ利楽flowのよい適応
①麻痺や筋力低下などで腕や足を自分で動かせない
②在宅などでマンパワーが少なく体位変換を十分には行えない
上記を満たすような患者さんには積極的に使用することをおすすめします。
ただ、これはあくまでも個人的感想ですが、褥瘡予防としてのエアマットとしては、ビッグセルアイズのようなエアセルにより厚みのあるエアマットがより優れいてる可能性があり、これらの選択は患者さんの状態により変えていく必要があると思います(このあたりはエアマットの選び方を参照してください)。

3-2 フットレストの使用

拘縮対策、おすすめの介護用品二つ目はフットレストです。
フットレストはシーホネンス社が介護用ベッド(emi笑)と共に販売している看護用品です。そのためこのフットレストはシーホネンス社の介護用ベッド専用になります(他社の介護用ベッドには取り付けできないようです)。
この介護用ベッドには上写真の左側赤い丸で囲っているように足底に密着するフットレストを装着できます。
このフットレストを導入することで、足底が安定します。そうすると、この写真のようにギャッチアップした際なども姿勢が安定するため、全身の筋肉の緊張が緩和できるのです。それが拘縮の予防にもつながります。
さらに、このフットレストの優れているところはアームの長さや角度を変化できるため、足の長さが異なる様々な患者さんに対応できる、ということです。
今までも足の安定のために枕などを足底に当てることがありました。ただ、この方法では足底のクッションは安定しないため姿勢の安定に十分な役割を果たせませんでした。
また、上記写真のように踵の褥瘡予防として下肢の下にクッションを入れる際、足関節が底屈(つま先立ちの状態)になってしまいそのまま拘縮してしまうリスクがありますフットレストを導入すればこの予防にも役立ちます
さらに拘縮から脇道にそれますが、シーホネンス社の介護用ベッドは3モーターになっていて、頭部の角度も調整できます(上写真右側)。そのため、ギャッチアップの角度をそれほど高くしなくても、頭部の角度を調整することで、頭部が安定し、食事しやすくなるメリットもあります。
これはギャッチアップ時に角度をつけることが発症リスクとなる尾骨部褥瘡の予防などにも役立ちます
。基本的には角度30度以上、1時間以上の持続するギャッチップはあまりおすすめできないため、食事を摂るのにすごく時間がかかる患者さんなどではご検討ください。
フットレストのよい適応
①麻痺などで足を動かせない
②長時間ギャッチアップする
ただ、このようにメリットも多いフットレストですが、デメリットもあります。それは価格が高い、ということです。基本的に介護保険の適応になりますが、介護用ベッドとフットレストをレンタルすれば1,500円ほどかかるため、ケアプランの見直しが必要になるケースも考えられます。

まとめ

以上、拘縮予防についてお話ししてきました。では、最後にまとめです。
拘縮予防のまとめ
・体を動かせないと拘縮を生じるリスクがある
・対策法として
 ①関節可動域訓練が基本
 ②患者さんが心地よい姿勢を維持するため、ポジショニングや体位変換も大切
 ③拘縮対策に有用と考えられる介護用品を利用する

これらの対策を駆使して、是非とも褥瘡発生ゼロとともに拘縮発生ゼロを目指しましょう!

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