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陰部~臀部の肌荒れ(失禁皮膚炎)の対策を考えよう!

まもりさん

下痢が続いて、お尻がただれて困っています。

S先生

失禁による肌荒れは原因をつきとめることが第一ですね!
排泄物の刺激だったり、蒸れだったり、カビだったり…

まもりさん

カビを調べられない医療機関も少なくないですし、困ってしまいますね

S先生

そうですよね。培養が選択肢ですが、できないこともありますね。
では、今回は、そんな状況でも対策するための治療方針を考えてみましょう!

今回は陰部~臀部の肌荒れについてお話ししたいと思います…
と、その前に、一つお断りがあります。失禁(尿・便)関連刺激性接触皮膚炎(以降、失禁皮膚炎と略)は最近IADという用語を使用するようになってきましたが、今回のお話ではあえて使用しておりません。
というのも、このIADは地域により定義があいまいなのです(以下参照)。
IAD(Incontinence Associated Dermatitis)の定義
日本:失禁皮膚炎+真菌症
国際:失禁皮膚炎のみ(真菌症は含まない)
このように、地域によってIADに含まれる疾患には違いがあるのです。日本のように真菌症を含んでしまうと、真菌症とそれ以外では治療方針は大きく異なるため、IADの治療について説明するのが非常にわかりづらくなります。
ただ、失禁皮膚炎を生じるとカンジダなどの真菌症が合併しやすくなるため、国際的なIADと真菌症はオーバーラップすることが少なくありません。
さらに、やっかいなことに
陰部に肌荒れを認めた場合、見た目だけで真菌(カビ)かそれ以外の疾患かを見分けることはしばしば困難
ということです。実際、私も長年皮膚科医を続ければ続けるほど、カビかそれ以外かを見た目で判断することは不可能なことを痛感し、少しでもかさつきがあったら、カビの検査をして診断しています(かさつきを採取して顕微鏡でチェック)。

では、これらをふまえた上で、失禁皮膚炎の対策について以下の3つのカテゴリーに分けてお話ししたいと思います
今回のお話し
①失禁皮膚炎をいかに予防するか
②失禁皮膚炎による軽度の肌荒れ(発赤~軽度びらん程度)に対する対策(真菌症との鑑別も含めて)
③失禁皮膚炎による皮膚潰瘍(凹みのあるような創)や広範囲のびらんを生じた際の対策
目次

1 失禁皮膚炎をいかに予防するか?

失禁皮膚炎は一度生じると、便の刺激などで痛みが強く患者さんのQOLを大きく損ないます。
そのため、いかに失禁皮膚炎を生じさせないかが非常に大切です。
ただ、ここで、抑えてほしいポイントがあります。
失禁皮膚炎の対策法 優先度が高い順 4選
1 陰部の適切な洗浄・清拭
2 
皮膚保護+保湿
3 吸収性の高いおむつの使用
4 (軟便~下痢便の場合)便のコントロール
これらをまとめると、失禁皮膚炎の対策は、”いかにして排泄物が皮膚に接触する時間を減らすか”、が大切だということが分かります。
では、それぞれについて深堀りしていきましょう。

① 陰部を適切に洗浄・清拭を行うには

では、失禁皮膚炎対策の肝心要となる”陰部の洗浄方法”について考えてみましょう。
その際に、是非知っていただきたいポイントがあります。
陰部を清潔に保つため陰部洗浄は欠かせないが、誤った洗浄剤選びや洗浄のし過ぎ、誤った方法での洗浄を行うと、それが肌荒れの原因となってしまう
例えば軟便が出続けてしまう場合、それをきれいにしようと、こまめに洗浄剤で洗浄してしまうと、かえって肌荒れを悪化させるリスクがあるのです。

では、どのように洗浄すればよいのでしょう?、と、その前に、洗浄剤選びの大切なポイントをお伝えします。
洗浄剤として石鹸は使用しない
洗浄剤は石けん成分フリー(弱酸性や低刺激をうたうもの)を使用する
ここで、洗浄剤=石鹸ではないの???と思う方もいるかもしれませんので、簡単に捕捉します(飛ばしても結構です)。
石けんは脂肪酸ナトリウムという成分でできていて、アルカリ性です。弱酸性の皮膚とは相性が悪く肌荒れを生じやすいです。
一方で石けん成分フリーの洗浄剤は主にアミノ酸系や両性系の界面活性剤により汚れを落とします。中世~弱酸性のものが多く、低刺激で肌に優しいのが特徴です。
ただ、ここて注意点があります。上記”コラージュフルフル泡石鹸”は、抗真菌剤が配合され真菌症の予防になるため個人的におすすめしているのですが、石鹸と記載されています。ただ、実はコラージュフルフル泡石鹼は石けんと記載されてるものの、アミノ酸系や両性系の洗浄剤なのです。
製品名に「石鹸」とあるのは、医薬部外品(薬用石鹸)のカテゴリー上の名称であり、化学的な意味での石鹸ではありません。
このように、商品名で石けんか石けんフリーの洗浄剤かは時に見分けがつきにくいことがあり要注意です(不明な場合は製造会社に確認してもよいかもしれません)。
では、実際の洗浄剤による洗浄法を確認してみましょう。
洗浄剤による洗浄・清拭のポイント
洗浄剤による洗浄は基本的に1日1回(排便があればできるだけ早く)
軟便で1日複数回排便がみられる場合は1日1回のみ洗浄剤による洗浄を行い、それ以外は排便の都度、微温湯などで便の皮膚への付着を減らした上で、洗い流し不要のクレンザー(ワイプ)などで優しくふき取る(擦らない)
 詳細は後述


1日1回の洗浄剤による適切な洗浄方法
①(便が皮膚にべったりついていれば)微温湯で便をある程度洗い流す
②石鹼フリーの洗浄剤でなでるようにやさしく洗う
③微温湯で十分すすぐ(洗浄剤を残さない)
④押さえ拭き(擦らない)
このように、石鹸フリーの洗浄剤であっても、洗浄剤による頻回の洗浄は肌荒れの原因となるため、1日1回にとどめることが推奨されています。
では、どの洗浄剤を使用すればよいかといいますと、個人的には前述の、コラージュフルフル泡石鹸の使用をお勧めしますコラージュフルフルは抗真菌剤が配合されているため真菌症対策となります。ただ、コラージュフルフルはあくまでも医薬部外品ですので、治療のためというよりは真菌症の予防効果を期待します。

また、軟便が1日複数回の時は以下のように対処します。
軟便が1日複数回みられる際の洗浄以外の対処法
1 ぬるま湯で洗浄して皮膚に付着する便をある程度落とす
2 おしり拭きで擦らず優しく残った皮膚に付着する便をふき取る
3 肌が乾燥していたらワセリンなどで保護
では、それぞれについて、もう少し詳細に説明します。
一つ目のぬるま湯で洗浄については、上に示すような洗浄ボトルがありますのでこれらを利用します。
さらに、残りの付着した便をふき取るため、おしり拭きを使用します。この際、頻回に擦ると肌荒れの原因となるため、大きなサイズを選び、ごしごし擦らず、最小限ふき取りで汚れを取ることがポイントです

② 皮膚保護+保湿

次に皮膚保護+保湿のお話です。
特に頻回の軟便や下痢は、おむつ交換や洗浄での対応には限界があり、皮膚を排泄物から守る対策が必要になります。
この役割として最も一般的なのはワセリンの使用です。ワセリンは保険適応なため安価に使用することができます。
では、実際にどのように使用すればよいのかお示しします。
ワセリンの使用方法
① 皮膚炎がない+頻回の便失禁はない:基本は1日1回(陰部洗浄の際など)
※ただ、1日1回のワセリン塗布では、排泄ケアで洗浄・清拭をしてワセリンが落ちてテカリがない場合は、薄く塗り足す(べったり塗らなくてもよい)

② 頻回の便失禁(軟便〜下痢便)
排便(便汚染)ごとに清拭したのち、バリアがはがれたところだけ塗り足す
その後、バリアを“必要量だけ”再塗布(全面厚塗りではなく、守りたい部位に薄く)
ただ、あらゆるケースでワセリンが第一選択となる訳ではありません。
では、ワセリンが向かないケースにはどのようなものがあるのか、お示しします。
ワセリンより別の皮膚保護材が向く場合
・高吸収パッドの吸収性能を落としたくない(おむつにワセリンが付着すると吸収力が低下する可能性あり)
・こまめな塗布が難しい場合
・ワセリン塗布では十分に失禁皮膚炎を予防できない場合
ワセリンで対応が難しい場合は、臀部~陰部の皮膚トラブルに対応した皮膚保護材が各社から販売されています。
これは一例で、皮膚保護剤は多くの種類がありますので、どれを選んでよいか悩んでしまいます…
ですので、それぞれの特徴についてまとめてみました。
では、これらの特徴を踏まえどのように使い分ければよいのか考えてみましょう。
皮膚保護材の使い分け(私見)
1 べたつきは気にならず塗る回数やコストを抑えたい:セキューラPO
2 べたつきが気になり塗る回数も減らしたい:リモイスバリア
3 べたつきが気になる+塗ったところにテープを貼りたい:キャビロンポリマーコーティングクリーム
これは、一案ですので、様々試してよりよい選択法を検討してみてください。

さらに、もう一つ注意点があります。
それは、皮膚保護材は、排泄物による刺激性皮膚炎の悪化予防や実際に荒れた肌の改善のためにもベースとなる対策法です。ただ、実際に赤みやかさつき・じくじくなどの炎症を生じている場合はそれだけでは十分に対策にできない可能性があり、薬物療法が追加で必要なことがある、ということです。保護材を使用しても肌荒れが悪化した場合は別の対応法を考えないといけません。

では、ここからは実際に皮膚のトラブルを生じた際の対策法を考えてみましょう!

対処法について、軽度(赤みやかさつきはあるがびらんは小範囲)の場合と、重度(広範囲にびらんを伴う)の場合に分けて考えるとわかりやすいため、皮疹の状態で分けてお話しします。

③ 吸収性の高いおむつの使用

次は、吸水性の高いおむつでの対策です。
時に安価なパッドを重ねたり頻繁に替えるのを目にすることがありますが、高性能なパッドを1枚使う方が、結果的に皮膚への負担もトータルコストも抑えられるケースが多いです。
特に、尿量が多い、下痢便が続くなどの状況では、高吸収の尿取りパッドを使用することで、排泄物の皮膚への付着を軽減することが可能で、失禁皮膚炎の予防効果が高いです。
上記のようなものが、比較的コストパフォーマンスに優れていると思われます。ただ、上記をみて頂ければわかりますように、吸収量はメーカーや種類でかなり異なります。
以下の尿取りパッドの交換のタイミングと実際のおむつ交換できる頻度を照らし合わせながら、パッド選びを行うことをお勧めします。
尿取りパッドの交換すべきタイミング
1 便が付いたら即交換
2 尿だけなら“飽和直前(吸収限界に近い)になる前”に交換

④ (軟便~下痢便の場合)便のコントロール

難治性の軟便~下痢は時に、感染(ウイルス・細菌)や薬剤(抗菌剤・下剤)によるものも含まれるため、基本的には主治医との相談が必要です。ここでは、それらが除外され、緊急性がない場合の対応をいくつか挙げてみます。
医師の介入が必要な場合以外の下痢の対処法
・便秘による「溢流性(いつりゅうせい)便失禁の除外:便の貯留を確認
・水分の見直し:カフェイン/アルコール回避
・食事の見直し:人工甘味料(特に糖アルコール:ソルビトール等)、脂っこい食事、不溶性食物繊維が多い食事、などを控える
・経管栄養の場合:投与速度を落とす、冷たい栄養剤を避け室温で投与、過栄養(投与量過多)や急速投与の見直し
上記は、あくまでも教科書的な内容ですので、主治医や栄養士の方々と相談しながら、対策してみて下さい。

2. 軽度のオムツかぶれへの対処方法

軽いオムツかぶれは、下の写真のように、赤みやかさつきはあっても軽度で、じくじくしたびらんは小範囲の状態です(下の写真参照)
このような場合は、以下のポイントをチェックして 塗り薬を選ぶことをお勧めします。

2-1 下痢が続き、下痢~軟便・多尿など排せつ物による刺激が続く場合の対処法

排せつ物による刺激が続く場合、まず行うべきは、皮膚を排せつ物の刺激から守る!、ということです。
ただ、難しいのはおむつかぶれなどでおなじみの亜鉛華軟膏やワセリンなどは、比較的すぐとれてしまうため、排せつ物に長期に触れてしまう場合は十分な対策にはなりにくいです(もちろん、症状がそれほど重度でなければ、まずはこれらの塗り薬を試してみて、症状が改善しなければ以下の方法を検討するのもありです)。
では、どのように対策すればよいか、おすすめは3M社から販売されているキャビロン®非アルコール性皮膜です。
このキャビロン非アルコール性皮膜を排せつ物が付着しそうな範囲に塗ることで、その名の通り皮膚の表面に膜がつくられるのです。その膜がバリアとなって排せつ物が皮膚に付着するのを防いでくれるのです
実はキャビロン非アルコール性皮膜には、上の写真のような3ml含有のスティックタイプのほかに、1ml含有のスティックタイプやスプレータイプもあります。
ただ、おむつかぶれは広範囲ですし、的確に肛門周囲まで塗ることを考えますと、3ml含有のスティックタイプの使用をおすすめします。それは(1ml含有のスティックタイプはストマや胃瘻部周囲などの小範囲の皮膚トラブル予防によいと思います)。
そんなおすすめなキャビロンですがいくつかの注意点がありますので、ご紹介します。
キャビロン非アルコール性皮膜(スティックタイプ 3ml)のメリット・デメリット
〇メリット
・予防効果が高い
・1~3日に1回塗るだけで処置の負担が少ない()
・1本200円ほどとそれほど高額ではない

・おむつかぶれ以外にもストマや気切・胃瘻部周囲の肌荒れ予防、夏場の股部や女性の胸下など擦れる部位の肌荒れ予防などにも有効な可能性がある(ただ、長期使用でコストがかさむ)
〇デメリット
・保険適応がない(全額自費)

・毎日塗る必要がある
このようにキャビロンは比較的安価でありながら、予防効果も優れています。ただ、保険適応はないため、長期に下痢が続く場合などは、負担額はばかになりません。
では、次にキャビロン非アルコール性皮膜を実際にどのように使用すればよいのかについてお話しします。
キャビロン非アルコール性皮膜の使用上のポイント
1 あくまでも予防として使用し、広範囲のびらんなどを伴う場合はびらん面には十分な膜が作られにくいため不向き(広範囲のびらんを伴う場合は、以下の”重度おむつかぶれの対処法”を参照)
2 排せつ物をきれいに除去した後に、1日1回便などの排せつ物が皮膚に付着しやすい範囲を全て覆えるように塗布
(コスト削減のため、肌荒れの悪化がなければ1日おきなど間隔を空けてもよいかも(私案))
3 キャビロンが入った袋を開けるとスポンジに含まれた液が数分で固まってしまうため、開封後は速やかに塗る
4 上記対策を排せつ物の刺激がおさまるまで継続する
まとめますと、下痢が続くなど皮膚への刺激が長期に及ぶ場合、まずは皮膚を保護することが大切です。

では、以下ポイント2以降では、下痢が続くなどの排せつ物の影響は少ないにもかかわらず、臀部~陰部が荒れてしまった場合の対策法についてお話しします

2-2 下痢や多尿はないのに肌荒れがみられる場合の対処法

下痢や多尿などの排泄物はないのに肌荒れが続く場合は、真菌症と湿疹などの可能性を考え、どちらがより疑われるか、で治療法を変えます。そのポイントは以下のようになります。
下痢や多尿はない臀部の皮膚トラブルへの対処法(私案)
① 見た目や外注検査で真菌症をできる限り適切に診断し治療する
② ①で真菌症の可能性が低いと考えられた場合、抗炎症外用剤を使用する
では、それぞれの対処法について、ここからお示しします。

① 見た目や外注検査で真菌症をできる限り適切に診断し治療する

冒頭でお話ししましたように、真菌症(カンジダや白癬)と湿疹を見た目で確実に見分けることは難しいです。
ただ、真菌症はある程度特徴がありますので、疑わしさをある程度評価します。
上記に真菌症の典型的な臨床写真を掲示します。
ただ、これはあくまで典型例であり、真菌症は失禁皮膚炎と合併していることも多く、見た目はかなり個人差が大きいです。そのため診断には以下の対応が必要と考えます。
臀部に肌荒れを認めた場合、少しでも鱗屑(かさつき)があれば外注の真菌検査に提出
〇検査のポイント
鱗屑や膿疱を可能な限り多くの部位からピンセットなどで採取
(真菌は一部の病変にしかいないことが多々ある)
KOH塗抹と培養の両方行う
(培養だけではカンジダは常在菌のため疑陽性になることがある)
このように見た目だけでなく、検査で真菌の存在を確認することが、適切な治療に繋がります。

では、次に真菌症の治療についてお話しします。
抗真菌外用剤を使用するのですが、治療にあたり4つの注意点があり、対策法も併せてお伝えします。
抗真菌外用剤の使用上の4つの注意点と対策法

1 カンジダが疑われる場合はテルビナフィン(ラミシール🄬)よりもルリコナゾール(ルリコン®)などのイミダゾール系抗真菌剤がMICの観点から第一選択になりやすい


2 びらんを伴いジクジクしている場合は、クリームやローションでは“刺激性皮膚炎”を生じる可能性がある
対策:軟膏基剤の外用剤を使用
(ただし、広範囲のびらんがある場合は、上述の保護材などでまずびらんの改善を優先)

3 塗り薬を塗ってすぐには真菌症は改善しない

対策:少なくとも2週間程で皮疹が改善するかを評価(ただ、塗布開始数日で悪化するようなら塗り薬でかぶれている可能性があり。2週間塗布し改善傾向を示さないようならステロイド外用剤など別の治療法を検討。)

4 抗真菌外用剤は数%でかぶれる
対策:外用剤を塗った範囲の赤みが増す場合はかぶれている可能性。速やかに、外用剤を中止し医師にコンサルト
(ステロイド外用剤の使用などを検討)
もし、このように適切に抗真菌外用剤を使用しても、皮疹が改善しない場合、特に発赤腫脹の拡大や膿疱が増加している場合は細菌感染など他の疾患の可能性があります。発赤腫脹が拡大している場合は蜂窩織炎などの可能性があり抗生剤の全身投与を検討、膿疱の散在程度であればアクアチム軟膏など抗生剤を含む塗り薬に切り替えて1週間ほど使用して改善するかを確認することをお勧めします。
膿は改善しましたが、赤みやかゆみがあるようでしたら、以下のポイント2のような対策法を検討してみてください。

② ①で真菌症の可能性が低いと考えられた場合、抗炎症外用剤を使用する

対処法について以下にお示しします。

1 
赤みやかさつきが軽度の場合は、亜鉛華軟膏単剤やアズノールなど抗炎症作用のある外用剤塗布

2 赤みのみでじくじくはない場合:mildクラス(ロコイド軟膏🄬、キンダベート軟膏🄬など)のステロイド外用剤をおむつ交換の都度塗布
 
※長期に塗り続けると皮膚が薄くなったり、神瀬の悪化や真菌症の発症リスクがあるため、まずは3〜5日”程度で評価。赤みがある程度落ち着いたらワセリン塗布などに変更(1週間塗って改善なければ中止を検討)

3 赤みと軽度のじくじくがある場合:ステロイド外用剤(軟膏基材)と亜鉛華軟膏(亜鉛華単軟膏ではない)の1:1の混合外用剤をおむつ交換の都度塗布
 
※亜鉛華軟膏は洗浄で落ちにくいことがありますが、オムツ交換での洗浄で無理に剥がさず、剥がれた分を塗り足す
亜鉛華軟膏を使用する際は上の写真のように皮膚がみえなくなるくらいたっぷり塗ると改善しやすいです。
ちなみに亜鉛華軟膏はびらん部の水分を吸収しじくじくを改善しやすくしますが、亜鉛華単軟膏は水分を吸収する力が弱く、じくじくした皮疹には向かないと考えられています。

2週間ほど続けても 改善しない or 悪化する ようでしたら、真菌感染などの湿疹以外の可能性がありますので、皮膚科医への相談を検討してください。

③ 赤みやびらんはほとんど無く、かさつきが主体の場合の対処法

このような場合は基本的に、排せつ物や蒸れなどの影響による皮膚バリア破壊による皮疹の可能性を考えます。
オムツ交換の都度、ワセリンや前述したセキューラPOなどの皮膚保護材を塗る対応を行うとよいと思います。
ただ、やはり2週間ほど経っても 改善しない or 悪化傾向 があるようでしたらポイント1~3の方法への変更を検討or皮膚科医に相談してください。

3. 重度(広範囲にびらんや皮膚潰瘍を伴う)オムツかぶれの対処方法

次に、この患者さんのように、びらんを広範囲にみとめ、さらに下痢などの皮膚への刺激が続いている患者さんへの対応法について考えてみましょう。
このような患者さん、先程使用しました、ワセリンや亜鉛華軟膏などの塗り薬は患部に留まらないため、治療に困ることが多いです。
そこで、少し前までは、亜鉛華単軟膏 80g + カルメロース 20g の混合外用剤 をお勧めしていましたが、亜鉛華単軟膏が出荷調整になり、入手困難になってしまいました…
そこで、おすすめなのが3Mから発売されているキャビロン 接着性耐久被膜剤®です
キャビロンは先ほども排せつ物に対する肌荒れ予防として非アルコール性皮膜が登場しました。
では、このキャビロン接着性被膜剤は非アルコール性皮膜とどのような違いがあるのか、どのようにして使用すればよいのか?、についてお話しします。

3-1 キャビロン 接着性耐久被膜剤の特徴

キャビロン 接着性耐久被膜剤の特徴は上の写真のようにスティックにレバーがついています。このレバーを押すとスティック内のアンプルが割れ、下面のスポンジに液が浸みこんできます。
このアンプル内には、キャビロン 非アルコール性皮膜とは異なり、シアノアクリレートという成分が含まれています。
シアノアクリレートというのは、人工爪の接着剤、医療用でも下肢静脈瘤や食道静脈瘤の静脈塞栓としての接着剤として、意外と身近に使用されている成分です。
では、このキャビロン 接着性耐久被膜剤にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
キャビロン 接着性耐久被膜剤のメリット・デメリット
〇メリット
・びらん面にも使える
・非アルコール性皮膜に比べて耐久性が高く、週1~3回塗るだけでよい
〇デメリット
・1本1.000円強と高額
・保険適応はない
・かぶれる可能性がある
キャビロン 接着性耐久被膜剤は浸出液を抑える作用があり、びらん面にも使用が可能であることが最大の特徴だと思います。
通常ワセリンや亜鉛華軟膏を塗ってもびらん部にははじいてしまうため、びらん対策は非常に手を焼く現状がありました。この問題を解決してくれるのは医療従事者として非常に助かります。
では、実際の使用方法についてお話しします。
キャビロン 接着性耐久被膜剤の使用方法
1 皮膚に付着した排せつ物を除去し、洗浄したうえで十分に乾かす(塗布範囲の毛が濃い場合は剃毛を行う)
2 スティックのレバーを押しアンプルを割ると、10秒ほどでスポンジ内に液が染み渡る
3 排せつ物が皮膚に付着する範囲に塗る(塗った部位の皮膚が重なっていると皮膚同士がくっついてしまうため、皮膚を伸ばしてしわがない状態にして塗る)
4 塗った後乾くまで30秒ほどそのままにする
5 週1~3回追加塗布(追加塗布の目安はびらん部に痛みを生じたり、被膜の光沢感がなくなってきたら)
キャビロン 接着性耐久被膜剤は決して安くはありませんが、冒頭にお話ししましたように、排せつ物によるびらんによる強い痛みでQOLが低下した患者さんの救世主となりうる有用な選択肢と考えています。
では、最後に、先ほどお話ししましたが、現在は製造中止のため使用困難ではありますが、保険適応で使用できる貴重なびらん部対策となる外用剤である亜鉛華単軟膏+カルメロース(またはプロケアパウダー)について、今後出荷再開された場合のために、その使用法についてお伝えします。

3-2 亜鉛華単軟膏+カルメロース(またはプロケアパウダー)の混合外用剤 の使い方

先ほどお話ししましたように亜鉛華単軟膏は出荷調整/限定出荷で入手困難なことが少なくなくありません。ただ、亜鉛華単軟膏とカルメロースの混合外用剤は比較的安価に使用できますので、今後入手可能になりましたら、治療選択肢の一つとしてご検討ください。
レシピは以下のようです。

亜鉛華単軟膏 80g + カルメロース 20g の混合外用剤

この2種類の外用剤を混合することで、慢性的な排泄物の刺激で生じたびらん部にも、ある程度とどまり、排泄物の刺激を皮膚から守るバリアとなるような塗り薬を作ることができます。

この混合外用剤を、排せつ物が付着する範囲よりやや広めに、下の写真のように 皮膚が見えなくなるくらいたっぷり塗ることがポイントです。

では、もう少し詳しく混合外用剤の使い方の手順を説明します
STEP
オムツ交換の際に、泡洗浄する

オムツ交換などの際に、泡洗浄を塗り薬の上から行ってください。この時、すでに塗ってあるぬり薬を完全に取ろうとすると皮膚ごとめくれる可能性がありますので、無理に剥がさないでください。

STEP
洗浄で剥がれたところに、ぬり薬を塗り足す

STEP1で剥がれたところに ぬり薬を塗り足します。先程 お話ししましたように、皮膚が見えなくなるくらい たっぷり塗ることがポイントです。

軟便が治まり、皮膚のジクジクが改善するまで、この外用剤の使用を繰り返します。
では 実際、かなり肛門周囲が ただれてしまった患者さんに、どのように塗っているのか見てみましょう。
最終的には、上の写真くらいまで塗ることができました。これで 患者さんの皮膚は、排泄物の刺激から かなり守られると思います。

まとめ

このように、陰部~臀部の肌荒れは、排泄物による湿疹や真菌症など様々な原因で生じます
それぞれで治療法は大きく異なる上、見た目ではわからないことも多いです。そのため、2週間ほど治療しても改善しない場合は皮膚科医にご相談いただくことをお勧めします

また、激しい下痢が続くなどで皮膚がひどく荒れた場合は、まず、皮膚を保護することが最優先となります。
対策として、キャビロン®などを使いこなすことで、皮膚を排泄物から保護することができます

皮膚のびらんは痛みを生じ、患者さんのQOLを大きく損ないますので、少しでも苦しみから解放できるように、この内容がお役立ていただければ幸いです。
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