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⑥まずはここから!最低限使いこなしたい外用剤4選+α!

非皮膚科医

先生、褥瘡用の塗り薬について勉強をしているのですが、種類が多すぎて使いこなせません…

S先生

褥瘡で使用できる塗り薬は種類が多くて、使い分けが難しいです。
でも、実はたった4種類の塗り薬で、ほとんどの褥瘡は対応できるんです!

非皮膚科医

たった4種類でいいんですか!?
それなら使いこなせそうです!

ここでお話しします内容は、壊死組織を伴うような、しばしば難治となる深い褥瘡についての外用剤の選び方です。
ちなみに、褥瘡発生から2週間ほど経過しても壊死組織を伴なわい浅い褥瘡(真皮レベル)は、ワセリンなどで湿潤環境を保てば多くの褥瘡は対応できます

深い潰瘍の治療を行う上で、前回までお話ししてきましたTIMEの知識は必須になりますので、まずはTIMEの簡単な復習、その後TIMEに基づいた抗潰瘍外用剤の選び方についてお話ししたいと思います。
(軟膏を保護するドレッシングの選択も非常に大切です。基本的には湿潤環境を維持するため『メロリンガーゼ®』などの「多孔性ポリエステルフィルムガーゼ」を使用しています)
目次

”TIME”の簡単な復習

では、始めに“TIME”についての簡単な復習から始めます。TIMEとは創が治らない阻害因子の頭文字を表していて、それぞれ、以下のような対策が必要となります。

TIME(傷が治らない阻害因子)に対する対策
Tissue non-viable or deficient(壊死組織・活性の無い組織)
 壊死組織や活性の無い組織を除去する
Infection or inflammation(感染/炎症)

 感染や炎症を抑える
Moisture imbalance(湿潤の不均等)

 適切な湿潤環境にする
Edge of wound-non advancing or undermined epidermal margin(ポケット・創辺縁段差)

 →創部辺縁のポケットや過剰肉芽を改善させる

前回まででお話ししましたように、創を治すには、これら全ての問題を解決し続けて、なんとか創が治る可能性があるのです(なぜ可能性がある、と表現したかといいますと、さらに創部への圧迫や全身状態なども関与しますので、TIMEの対策だけで確実に治るとも言えないのです…)。
そして、残念なことに“ぬり薬だけでTIMEの問題すべてを解決することはできません”
例えば、上の写真のような厚い壊死組織は、塗り薬だけで除去することはほぼ不可能で、外科的デブリードマンが必要です(詳細はこちら)
次の上の写真のようなポケット(白破線)も、塗り薬で改善することは難しく、電気メスでの切開や、「褥瘡処置⑤」で説明しました”伸縮テープ”を使用するなど、外用剤以外の治療が必要になります(詳細はこちら)

では、実際にTIMEを対策するため、どのように外用剤を使い分けていけばよいのかお話ししていきます。
特に深い(脂肪層に至るような)褥瘡は、TIMEすべてを解決する必要があり、”適切な外用剤を選ぶ”、というのはその一部に過ぎないのです。

TIME解決のための外用剤の選び方

ではここで、褥瘡治療でよく使用される様々な治療方法が、どのくらいTIMEの問題を解決できるのかを見てみましょう(あくまでも個人的な意見ですので参考程度で)。
※これはあくまでも個人的な見解であることをご了承ください
このように、様々な治療方法に一長一短があることが分かります。ただ、ポイントとしましては、ポケットはこれらの治療では解決が難しいということと、逆にポケット以外の問題については、ゲーベンクリーム®は多くを解決できることがわかります。そのため、個人的には、褥瘡含め多くの皮膚潰瘍にゲーベンクリームを使用しています。
ということで、始めにゲーベンクリームの詳細をお話ししていきます。

皮膚潰瘍におすすめ外用剤▶その1 ゲーベン®クリーム(+ブロメライン)

なぜ、始めにゲーベンクリームをご紹介するのかといいますと、皮膚潰瘍で使用する治療薬の中で最も汎用性が高いと考えているからです。
では、ゲーベンクリームがなぜ汎用性が高いのか、以下でお話ししていきます。

ゲーベンクリーム®の特徴

始めにゲーベンクリームの特徴をお示しします。

ゲーベンクリームの特徴
メリット
・壊死組織を剥がれやすくする効果がある (薬剤が壊死組織を溶かすというより、浸軟して剥がれやすくする)。そのため、外科的デブリードマンが容易になる。
・銀を含み、抗菌作用がある。(しかも、ゲンタシン軟膏などに比べて、耐性菌を生じにくいため、長期間の使用に有利)
・適度な湿潤環境になりやすく、肉芽形成効果がある
(詳細は後述)
・クリームタイプで塗りやすい
・1g≒約10円で比較的安い
デメリット
・塗りやすい反面、留まりにくい (ポケットの中など)
・浸出液が増加しやすい(栄養が逃げやすい)
・時に過湿潤となり、過剰肉芽(肉芽が皮膚面よりも盛り上がり過ぎる)や浮腫状肉芽をきたすことがある

・ゲーベンクリームのみでは十分な壊死組織除去は難しいことがある

このようにゲーベンクリームは、長短ありますが、総じてメリットが大きいです。
それは、上記のようなTIMEの問題の多くにアプローチでき、しかも、耐性菌を生じにくいなど、長期にわたる処置が必要となる深い褥瘡に有効かつ比較的安全に使用できるメリットと共に、もう一つ、優れた効果があります。
それが“『ゲーベンクリーム』や『オルセノン軟膏』のような「補水性基剤」は、基剤と創面との界面に〈細胞外マトリックス複合体〉を形成する”ということです(Murasawa et al.Wound Rep and Reg 2018の文献より)。
凹みのある創は、陥凹した潰瘍底から肉芽組織が増殖して欠損部を埋めないといけません。実は、肉芽が増殖するためには、足場が必要なのです。家を作るうえでの骨組みのようなものです。
凹んだ創における骨組みの役割をするのが細胞外マトリックスです。逆に言えば、ゲーベンクリームやオルセノン軟膏以外の外用剤は骨組みが作られないため、骨組みのない家は不安定ですぐに潰れてしまうように、肉芽が増殖しにくい可能性があります(もちろん部位や深さ、全身状態による個人差はあります)。
そのため個人的に、凹みのある創には、その他のTIMEにも適応できる優位性も含め、ほとんどをゲーベンクリームでの治療から開始しています(経過をみて改善なければ、他剤への変更や混合、創傷被覆材、陰圧閉鎖療法など他の治療を検討します)。
ただ、ゲーベンクリームにもいくつか使用上の注意点がありますので、次にお話しします。

ゲーベンクリーム使用上の注意点

その一つ目が、ゲーベンクリームは壊死組織を浸軟させますが、表層(真皮)や腱・靭帯の壊死を除去することは難しいということです。残念ながら、すべての壊死組織除去がゲーベンクリームで対応できるほどシンプルではない…、のです。
表層や腱・靭帯は主にコラーゲンでできているため、それらを融解させる別の対策が必要となることがあります。おすすめの対策法を以下にお示しします。
ゲーベンクリーム単独では除去が困難な表層や腱・靭帯の壊死組織への対策
①壊死組織にヨードホルムガーゼをあてる(壊死組織の2倍の大きさにヨードホルムガーゼを切り、二つ折りにして壊死組織にのせる)。その上にゲーベンクリーム塗布

②ゲーベンクリームからブロメライン軟膏に変更 or 重ね塗り(ただし、混合はブロメラインの壊死組織分解効果が減弱する可能性あり)
上記①と②を単独、または併用する
ヨードホルムガーゼやブロメライン軟膏はコラーゲンを分解する作用があります。真皮や腱・靭帯の主成分はコラーゲンですので、これらを使用することで除去しやすくなります。
それぞれの外用剤の使用方法と注意点を説明します。
ヨードホルムガーゼの使用法は上記のとおりです。ちなみに、ヨードホルムガーゼは洗浄すれば簡単に剥離しますので、連日新しいものと交換します。

ブロメライン軟膏は使用に際して、いくつかの注意点がありますので以下にお示しします。
ブロメライン軟膏使用上の注意点
1、皮膚に付くと肌荒れする可能性があるため、使用前に周囲の皮膚にワセリンを塗って保護する
2、抗菌作用はないため、菌の増殖が疑われる場合は抗菌作用のある外用剤などとの併用が必要
3、ポピドンヨードや銀イオンで失活するため、ユーパスタやゲーベンクリームとの併用はブロメラインの壊死組織分解効果が減弱する可能性あり
(ブロメライン単剤使用で菌の増殖が疑われ、ポピドンヨードやゲーベンなどの併用が必要な場合は、始めから混合した外用剤を処方せず、壊死したところに直接ブロメラインを塗布し、抗菌外用剤は創部の大きさにガーゼに塗布して創部にあてる、などの工夫が必要)
また、このヨードホルムガーゼ+ブロメライン軟膏の組み合わせは、ゲーベンクリーム塗布でしばしば生じる浮腫状肉芽や不適切な外用剤の使用や肉芽へのずれ力などによる不良肉芽の改善にも有効と考えられています。
そして、もう一つの注意点、それはゲーベンクリームがあらゆる創面に対し適切な湿潤環境ではない、ということです。
特に、下肢の凹みのある皮膚潰瘍は適切な湿潤環境が異なる可能性があり、このあたりは以下のページで詳しくお話ししています。
適切な湿潤環境は臀部と足では大きく異なる(+下腿浮腫や虚血肢の対策)

では、実際にゲーベンクリームをどのように使用すればよいのかお示しします。
ゲーベンクリームのよい適応と使用方法、注意点(私見)
・よい適応:凹みのある褥瘡 (壊死組織の有無にかかわらず:ただし、表層や腱・靭帯の壊死があれば他剤を併用検討)
・使用方法
 1 基本的に1日1回の処置
 2 塗り薬はガーゼに塗った上で創部にあてると処置が楽
 3 塗る量は創の状態で変える
  3-1 凹みのある創:凹みを埋める量をガーゼにのせる
  3-2 平坦な創:創の大きさで3㎜ほどの厚みがあるようにガーゼにのせる

・注意点:肉芽が皮膚の高さまで増殖し、あとは上皮化を促す段階ではゲーベンクリームは適さない可能性がある
前述のとおり、ゲーベンクリームは特に凹んだ創の肉芽を盛り上げるのに有効です。
では、上の写真のように皮膚の高さまで肉芽が増殖し、あとは上皮化するだけの状態になったら、外用剤はどう選択すればよいでしょうか?
この場合、ゲーベンクリームで上皮化できているのであればその処置を継続するのも選択肢です。ただゲーベンクリームで上皮化しにくい場合は、次にお話しします、”吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤”の使用を検討します。

皮膚潰瘍におすすめ外用剤▶その2 吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤

この外用剤は以前のページ”褥瘡治療④ TIMEのM 湿潤環境”でも登場しましたが、かなりマニアックな知る人ぞ知る混合外用剤です。なぜ、あえてこのマイナーな混合外用剤をおすすめするのか、もちろん理由がありますので以下でお話ししていきます。
この混合外用剤は、上の写真のような肉芽が皮膚の高さまで盛り上がり後は上皮化するだけの創におすすめの外用剤です。
実は上皮化させるために最適な湿潤環境は肉芽形成よりドライな環境が適切と考えられています。そのため、前述のゲーベンクリームでは過湿潤となり上皮化が進まなくなることがあります。
そこで、この外用剤がなぜすすめられるかといいますと、実は、この混合外用剤で使用されるマクロゴールは、みなさんお馴染みのユーパスタやカデックスなどの基剤であり、創部の水分を吸収し、創をドライにする作用があるのです。そのため、この混合外用剤を使用することで創部を上皮化に適切なドライな環境に変化できると考えられます。
さらに、吸水クリームにはパラオキシ安息香酸メチル(いわゆるパラベン)などの防腐剤が含まれており、これが抗菌作用として働いてくれるため、”TIMEのI”に対してもある程度の効果が期待できます。
ただ、ヨードや銀よりは抗菌作用が劣る印象もあり、あとは上皮化するだけの創であってもかなり大きい創にこの外用剤を使用した場合、クリティカルコロナイゼーションが疑われるぬめりを伴う創に変化することがあります。さらに、大きな創では特にマクロゴールの吸水作用により、肉芽が乾燥して再び陥凹してしまうこともあります
では、これらの特徴をふまえて、吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤の具体的な使用方法と注意点さらにはその対策法について、以下にお示しします。。
吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤のよい適応と使用方法、注意点(私見)
・よい適応:肉芽が皮膚の高さまで盛り上がり後は上皮化するだけの創
・使用方法
 1 基本的に1日1回の処置 
 2 塗り薬はガーゼに塗った上で創部にあてると処置が楽
 3 創の大きさで3㎜ほどの厚さになるようにガーゼに塗布し創部に被覆
・注意点:肉芽が平坦化した巨大な創で使用するとクリティカルコロナイゼーションや肉芽の陥凹を生じるリスクがある
 →対策としては、創の辺縁の上皮化させたいところのみ、吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤を塗布し、中央はゲーベンクリームを使用するなどの併用が有効な可能性

皮膚潰瘍におすすめ外用剤▶その3 「ヨウ素含有外用剤(カデックス®軟膏、ユーパスタ®軟膏)」

教科書的には、”カデックスやユーパスタなどの「ヨウ素含有外用剤」は抗菌作用があり、水分を吸収する作用が高いため、感染を合併した創や浸出液が多い創に有効”、と書かれています。
ただ個人的には、このような使用法は、うまくいかないことが少なくないと感じています。
といいますのも、感染や浸出液の増加は、壊死組織が深く関与している、と考えているからです。つまり、感染や浸出液の増加への対策は、外用剤での対応が主体ではなく、十分な壊死組織除去、すなわちデブリードマンが最も有効と考えます。
さらに、これらヨウ素含有外用剤は浸出液を減らすことで、壊死組織も乾燥し、創面にこびりついてしまうことがあります。すると、壊死組織除去に最も重要な外科的デブリードマンが行いにくくなり、結果、創傷治癒や感染制御が難しくなることがあります。そのため個人的には、壊死組織を伴う褥瘡に対しては、壊死組織を軟化させる作用があり、肉芽形成も期待できるゲーベンクリームを使用しています。
では、ヨウ素含有外用剤は、どのような創が適しているのか、以下に、個人的なおすすめ例を挙げてみます。

ヨウ素含有外用剤を使用するのにおすすめの創
① 四肢の浮腫を伴う創
② 血行再建困難な末梢動脈疾患を合併し、創傷治癒が難しく、ミイラ化させたい

では、それぞれ、もう少し詳しくお話ししますが、その前に、様々あるヨード含有外用剤のどれがおすすめなのか私見を述べます。
ヨウ素含有外用剤は基本的にカデックスがおすすめ(カデックスは抗菌作用が1日持続するが、他剤は数時間で抗菌作用が失活するため)
ただ、これはあくまで抗菌作用の持続時間での評価で、実はヨウ素含有外用剤によって、異なる湿潤環境をもたらします(カデックスよりユーパスタの方が水分吸収量が多くより創部をドライにする)。
そのため、外用剤の選択は、創部の湿潤環境も含め、検討する必要があります。

では、話を元に戻し、ヨウ素含有外用剤が良い適応となる創についてもう少し深堀します。

”① 四肢の浮腫を伴う創”に対しヨウ素含有外用剤がおすすめの理由と使用上の注意点

始めに、”①四肢の浮腫を伴う創”にヨウ素含有外用剤がなぜ有効かといいますと、前述のとおり、これら外用剤に含まれるマクロゴールの吸水作用が創部をほどよい湿潤環境にしてくれるためです
下腿の創は浮腫状になりやすい

高齢者の実に3人に1人は四肢特に下肢に浮腫を生じているといわれています。
そして浮腫ある部位に生じた創も同様に多くの水分を含んでいます
そのため、創部が過湿潤になっていることが多く、外用剤により水分を吸収することで、適切な湿潤環境になりやすいのです。
ただ、これは個人差があり、逆に創部に水分を与えるゲーベンクリームの方が有効なこともあります。このあたりは、実際試してみて、経過を写真などで比較し、より有効な薬剤を選択することが大切だと思います。

ヨード含有外用剤の四肢の浮腫を伴う創への使用方法と注意点(私見)
・使用方法
 1 基本的に1日1回の処置 
 2 塗り薬はガーゼに塗った上で創部にあてると処置が楽
 3 創の大きさで3㎜ほどの厚さになるようにガーゼに塗布し創部に被覆
・注意点:効果には個人差が大きい。経過を写真などで比較し、改善がなければ他剤への変更も検討

”② ミイラ化させたい創”に対しヨウ素含有外用剤がおすすめの理由と使用上の注意点

では次に、ヨウ素含有外用剤の適応2つ目である、”②血行再建困難な末梢動脈疾患を合併し、創傷治癒が難しく、ミイラ化させたいとき”について説明します。
高齢患者さんでは、下肢の褥瘡に、末梢動脈閉塞を合併し難治化していることが少なくありません。そして、血行再建も適応にならないことが多いです。
ミイラ化した踵褥瘡
そのような場合に、ゲーベンクリームとメロリンガーゼの処置で改善することもありますが、逆にミイラ化した組織を浸軟させることで感染のリスクが上昇する可能性があります。特に下肢は皮膚のすぐ下に腱や骨があるため、そこまで感染が波及すると、感染の制御が難しくなることがあります
そのためミイラ化しつつある創には、ヨウ素含有軟膏を塗布し、ガーゼで覆う処置を連日行いミイラ化を目指すことがありますミイラ化させて創部を乾燥させることで、創を治すのではなく、菌の増殖を最小限に抑えるのです。そして、浸出液のガーゼ汚染がなくなる程度に創部が乾燥したら、ヨードホルムガーゼなどで創部を覆い、週2回程このヨードホルムガーゼを変えるような処置に変更するようにしています。なぜ処置を減らすのかといいますと、一番の理由は、血流の悪い創は処置における痛みが非常に強いため、なるべく創部に触れる機会を最小限にすることで、患者さんのQOLを低下させないためです。
ただ、もちろんミイラ化したからといって、その深部で全く感染を生じない訳ではありませんので、定期的に創部周囲からの排膿や発赤腫脹がないかを確認することが大切です。
ヨード含有外用剤のミイラ化させたい創への使用方法と注意点(私見)
・使用方法
 1 基本的に1日1回の処置 
 2 塗り薬は完全にミイラ化しているところには塗る必要はなく、正常皮膚との境界など浸出液が出てじくじくしているところに直接塗布すると効率がいい

 3 ドレッシングは通常のガーゼや不織布を使用する
・注意点

 1 ミイラ化しても感染のリスクはあるため、創部周囲の発赤腫脹などの感染兆候を見逃さない
 2 全体がミイラ化したら、ヨードホルムガーゼに変更し週1~2回の処置にする

皮膚潰瘍におすすめ外用剤▶その4 『エキザルベ®軟膏』

おすすめの外用剤の最後は、エキザルベ軟膏です。
エキザルベ軟膏のよい適応は“過剰肉芽”です。
過剰肉芽とは、上の写真を見て頂けると分かりますように、周囲の皮膚の高さより肉芽が盛り上がっている状態です。
ではなぜ、過剰肉芽が問題かといいますと、過剰肉芽があることで、それが壁になって創部周囲からの上皮化が阻害されるのです。
では、このような過剰肉芽に「エキザルベ軟膏」はどのような作用をするのか、そのメリット・デメリットをあげてみます。

エキザルベ軟膏の特徴
メリット
・ステロイドが含有されており、過剰肉芽を縮小させる効果がある
・軟膏の中に死菌が含まれており、その作用で免疫力が高まるため、ある程度感染に強い
デメリット
・死菌の効果はあるが、長期に使用すると菌が増殖することによる合併症(クリティカルコロナイゼーション、感染)のリスクがある

本来であれば、創部にステロイド軟膏を使用するのは、菌の増殖に伴う感染のリスクがあり躊躇してしまいます。
ただ、エキザルベ軟膏は、菌の増殖をある程度抑えつつ、肉芽の盛り上がりを平坦化することができる、非常にユニークな外用剤なのです。
ただ、菌の増殖を抑えるといっても、長期に使用し続けると、TIMEのIでお話ししましたような、クリティカルコロナイゼーションや感染のリスクはありますので、あくまでも過剰肉芽の部位のみに限局して使用することが大切です。
エキザルベは、創部に直接塗るのは難しいので、全体に塗る軟膏をガーゼに塗った上で、過剰肉芽のところのみにエキザルベが塗れるようにガーゼに“重ね塗り”するのがおすすめです(上の写真参照)。
そして、過剰肉芽が皮膚の高さまで平坦化したら、速やかに使用を中止しましょう。
エキザルベ軟膏の使用方法と注意点(私見)
・使用方法
 1 基本的に1日1回の処置 
 2 エキザルベは菌の増殖のリスクがあり、ぬめりがあるなど菌の増殖が疑われる場合は、カデックス軟膏などと併用する(ガーゼに重ねてのせた上で創部にあてる)
・注意点

 菌の増殖リスクがあるため、感染兆候があったり、肉芽が平坦化したら速やかに中止する

まとめ

以上、「褥瘡など皮膚潰瘍におすすめの外用剤4選」でした。

褥瘡でおすすめの外用剤の選び方
1、凹みがある褥瘡
 ゲーベンリーム(浮腫を伴う四肢ではヨード含有外用剤も選択肢。真皮や腱の壊死がある場合は、ヨードホルムガーゼやブロメライン軟膏との併用を検討)
2、皮膚の高さまで肉芽が増殖して上皮化するだけになった褥瘡
 ゲーベンクリームで改善があるようなら、ゲーベンクリーム塗布を継続
 ゲーベンクリームでは上皮化しにくい場合は、
吸水クリーム+マクロゴール軟膏(3:7)の混合外用剤
3、下腿の創などでゲーベンクリームでは治りにくい創、末梢動脈疾患の合併でミイラ化させる場合
 ヨウ素含有軟膏(ミイラ化させる場合はガーゼを使用)
4、過剰肉芽
 エキザルベ軟膏

このように、創部の形状や部位に応じて、数種類に絞って外用剤を使用することで、外用剤の使い分けが多少なりともスッキリしたのではないでしょうか?

ただ、外用剤にせよ、創傷被覆材にせよ、最も大切なこと、それは“以前の創部と比較する”ということだと思います。そのため、1~2週間に1回は写真を撮り、現在の治療で創部が改善しているかを確認する、ということが大切です。
もし、経過が順調でない場合は、原因を外用剤のみに限定するのではなく、前回説明しました、”TIME+α”のどこかに問題がないのかを検討し、問題があれば解決方法を模索する、その積み重ねが褥瘡の改善に繋がるのだと考えています
慣れないうちは大変だと思いますが、「褥瘡という、見た目に分かる病変が良くなっていく」というのは、患者さん、ご家族、医療従事者、全ての方々にとってプラスに働きます。
そのような経験を少しでも多く経験できるよう、今回のお話が外用剤を使いこなすための一助になれば幸いです
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