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実は多くの医療従事者が勘違い!?エアマットの適切な選び方(2026年4月6日更新)

まもりさん

”寝返りを打てなくなったらすぐにエアマット”、これが褥瘡対策の最優先事項なのですね!

S先生

前回の内容よく理解できました!

まもりさん

でも、エアマットってどれも似たりよったりですよね

S先生

実は同じようにみえるエアマットもかなり個性があるのです

まもりさん

えっ

S先生

それぞれの患者さんに適切に選ばないと、臨んだ結果にならないこともあります

始めに”テーマ①褥瘡予防の基本”でお話しました、褥瘡対策として私が最も大切だと考えていることをお示しします。
寝返りを打てなくなったら可能な限り早急(できれば気づいた当日中)に適切なエアマットを導入する
この”患者さんに応じた適切なエアマット選び”が今回のテーマです。
”エアマットはどれも似たり寄ったり大差ないのでは?”と思っている方は少なくありません。
ただ、これはあくまで個人的な考えですが、エアマットは玉石混合、適切なものを選ばないと十分な褥瘡予防になりません。

エアマット選びを適切に行うことで、深い褥瘡の発生を大きく減らせる可能性があります
しかも、エアマットは在宅で介護保険が利用できれば高性能なものでも月1,000円前後でレンタルできる上に、介護者の肉体的な負担はほとんどありません
こんなメリット盛りだくさん、かつ、在宅における褥瘡予防のカギを握る”適切なエアマット選び”ぜひ知識を深めていきましょう。

※ もちろんエアマットのみで褥瘡予防は完結できません。栄養管理や体位変換など、他のケアとの組み合わせも大切です。
※ 寝返りを打てないことに気づいた際には、エアマット選びとともに臀部や踵など骨突出部の褥瘡の有無を確認することも大切です。押しても消えない赤みや水ぶくれなど気になるサインがあるときは、寝具の調整と共に主治医に早めに相談してください(詳しい皮膚の観察方法はテーマ⑧『できたての褥瘡の見分け方』をご覧ください)。
※本記事の内容は、皮膚科専門医の臨床経験とガイドラインに基づく目安です。個々の患者さんの状態により異なる場合がありますので、最終的な判断は主治医にご確認ください。

ちなみに、最後のまとめにエアマット選びのフローチャート(私見)がありますので、そちらも参考にしてください。
目次

エアマットが褥瘡予防に有効な理由

エアマットはエアセルという空気の袋が凹んだり膨らんだり繰り返すことで、同じところに圧が集中し続けにくくなるので、褥瘡予防に有効と考えられます(詳細はテーマ①”褥瘡対策の基本”を参照)。
ただ、実は、エアマットの構造はメーカーや種類によってかなり違いがあります。次の章で、エアマットによってどのような特徴があるのか、実際よく使われる2つのエアマットを比較してみます。

エアマットの比較(オスカー® vs ビッグセルアイズ®)

では、よく使われるオスカー®とビッグセルアイズ®の構造の違いを見てみましょう。
以下にそれぞれのエアマットの断面をお示しします。
オスカー®(イラストの左側)のマットの厚みは17㎝ですが、イラストをみていただくとわかりますように、実際に膨張収縮するエアセルは上の半分だけで、下半分のエアーは膨らみっぱなしです。したがって、エアセルに厚みがそれほどないため、エアセルが縮小しても隣接した膨らんでいるエアセルとの高低差が少ないです(赤矢印)。すると、痩せている方の仙骨などの突出部ではエアセルが収縮しても圧迫が持続しやすく、褥瘡発生リスクを軽減しにくくなる可能性があると考えられます

一方でビッグセルアイズ(イラストの右側)はマットの厚みが15㎝ですが、厚み分ほぼ全てがエアセルであるため、エアセルが収縮した際に周囲の膨らんでいるエアセルとの間で十分な段差ができます(赤矢印)。
そのため、エアセルが凹んだ際に持続的圧迫は解消されやすく、骨突出が強い方でも圧を逃がしやすいと考えられます
このように同じエアマットでも構造はかなり異なっていることがわかります。

これらをふまえた適切なエアマット選びにおける私が考える最重要ポイント、さらには、このような褥瘡予防効果の高いエアマットを選ぶべきケースを以下にお示しします。
”褥瘡発生リスクの高い患者さんや発生した褥瘡治療の観点からは、エアセルにより厚みがあるエアマットを選ぶ”(私見)

褥瘡予防効果の高いエアマットを導入すべきケース(私見)
1 すでに褥瘡がある
2 拘縮がある
3 30度以上のギャッチアップを長時間(目安は1時間以上)行う
4 やせていて骨突出が強い

※これら一つでも当てはまる場合は、予防効果の高いエアマットを検討してください。
ただ、実はエアセルが厚いエアマットは、寝心地が悪くなる可能性があります(最近のエアマットはこの点はかなり改善されてきています)。
エアマットは実際に使用しないと、本人との相性は分からないため、まずは3〜7日お試しして、導入後、以下の変化がないか確認しましょう
エアマット導入後のチェックポイント
・夜中に何度も目が覚める
・痛みの訴え増加
・そわそわ・混乱が増えた
気になる変化があれば、マットの種類や設定の見直しを検討します。在宅では、ご家族に『夜の様子で気になることがあればメモして教えてください』とお伝えするだけでも十分です。
では、次に患者さんの状況に合わせたエアマット選びのポイントについてお話ししていきます。

患者さんの状況に応じたエアマット選びのポイント

1,寝返りは打てないが自立で座位になれる場合

サルコペニア(加齢などによる筋肉量の減少・筋力低下)などで次第に動きが減ってきていて、自立座位やつかまり立ちなどはできますが、実は寝返りは打てなくなっている患者さんは少なくありません
'うちのお父さん、まだ自分で起き上がれるし大丈夫'と思っていたら、実は寝返りが打てなくなっていて褥瘡ができてしまった――これ、現場ではよくある話です。自力で座れる=寝返りは打てる、ではないんですね。
そのような患者さんでも褥瘡を生じることがあるため、可能であれば早期のエアマット導入を検討したいところです。ただ、エアマットは沈み込むため、座位で不安定になることがあり転倒のリスクがあります。
ただ、最近のエアマットは坐位で不安定になりにくい工夫がなされており、適切なエアマットを選べば”自力で坐位になれるからエアマットは使用できない”、という時代でなくなってきています(ただ、エアマットの導入直後は、起き上がりや立ち上がりで不安定にならないかは確認しましょう。さらに、必要なら手すりの導入なども検討します)。

特におすすめなエアマットの一つがここちあ利楽flowです。ここちあ利楽flow®は、坐位になることを自動で検知してエアマットが硬くなる機能があります
それ以外のエアマットでも、リモコンでエアマットを硬くでき転倒対策が行えるものは多数存在します。
その他、先ほど登場したオスカー®は縁のみウレタンフォームでできているため、転倒リスクを軽減しています。ただ、さきほど説明しましたようにエアセルの厚みはあまりありませんので、褥瘡発生リスクが高い患者さんには向かないことがあります。
そのため、オスカー®が向いているのは次の3つすべてが当てはまる方です(私見)
①骨突出が軽度
②30度以上の背上げが1.5時間を超えない
③拘縮がない。
それ以外の場合は、以降にお話するエアマットを検討してください。
ちなみに、オスカーにはもう一つ、自動体位変換機能という機能があり、この是非について考えてみましょう。

1(補足) 自動体位変換機能は有効なのか??

実は、この自動体位変換機能には賛否両論あります。あくまでも個人的な見解を述べさせていただきます。
自動体位変換機能の是非(私見と参考文献による)
・定期的に体を強制的に傾かされるため、患者さんの寝心地が悪く、QOLが低下する可能性(特に30度以上の自動体位変換で不快感を増したという報告
あり (※J Phys Ther Sci. 2016 Feb 29;28(2):460–466)
・傾けすぎる(30度以上)と大転子部の圧が高まる可能性(※Biol Res Nurs. 2015 Mar;17(2):142-51.)
以上のことから、あくまでも自動体位変換はそれのみで体位変換の代用と考えるのではなくて、人によるポジショニングが難しい場面の補助として活用する。しかも、自動体位変換は傾けすぎないことが大切、と思われます(私見)。
これらのデメリットを解消すべく、エアマットの中にはラグーナ®やここちあ利楽flowのようなスモールチェンジ機能(後述)といって、軽い側臥位にするような機能を有するエアマットもありますが、まだ、褥瘡予防に対する高いレベルで有効とまではいえないのが現状と思われます。

2,自力で座位になれない+褥瘡発生(-)、拘縮(-)、長期間(目安は1.5時間)の30度以上のギャッチアップ(-)場合

自力で座位になれず、寝返りを打てない上に、褥瘡発生(-)、拘縮(-)、長期間の30度以上のギャッチアップ(-)の場合は、寝心地と除圧性能がバランスの取れたエアマットがおすすめです。

個人的におすすめなのは、ネクサスIB®とここちあ利楽flow®です。

ネクサスIBはエアセルの厚みが10㎝以上あり、痩せている方でも除圧しやすい上に、背上げ時のずれ対策やモニターに背上げの持続時間が表示されるため、褥瘡リスクの一つである長時間の背上げへの対策も容易です。さらに、価格的にも後述する2つのエアマットに比べリーズナブルです。
さらに、近年注目されている褥瘡原因の一つマイクロクライメット(長時間寝ているとお尻は蒸れやすいです。皮膚が蒸れによりふやけると、皮膚が傷つきやすくなったり、ずれを生じやすくなることで褥瘡発生のリスクが増すこと)への対策として、マット内で空気を循環させ蒸れを抑える機能も備わっています。
ここちあ利楽flowは先ほども説明しましたようにエアセルに十分厚みがあるとともに、もう一つ独自の機能があります。それはスモールフロー機能です。
スモールフロー機能は上のイラスト右側に示しますように、通常のエアセルのさらに下の層に縦長のエアセルが体の四方に組み込まれています。それらエアセルの膨らみや縮みによる違和感を与えにくい小さな体位変換で、同じ部位に圧力がかかり続けることを予防します。また手足の緊張感の軽減にもつながると考えられています。
自力で座位になれない+褥瘡発生(-)、拘縮(-)、長期間の30度以上のギャッチアップ(-)場合におすすめなネクサスIBとここちあ利楽flowの使い分け
ネクサスIB:背上げを日常的に行うケース
ここちあ利楽flow:体位変換の負担を少しでも減らしたいケース

3,自力で座位になれない+以下の一つでもあてはまる場合
□褥瘡発生、□拘縮、□30度以上のギャッチアップを1.5時間以上続ける

上記チェック事項に一つでもあてはまる場合は、定期的に十分な除圧をしないと、褥瘡発生のリスクが高いですし、すでに発生した褥瘡がある場合は治りにくくなる可能性があります。
そこでおすすめなのが”ビッグセルアイズ”です。
なぜビッグセルアイズがおすすめか、それは冒頭でもお話ししましたように”エアセルに国内でもトップクラスの厚みがある”ということです。このエアセルの厚みにより、エアセル収縮時に十分な除圧ができるため、拘縮していたり骨突出が強い患者さんでも、褥瘡発生リスクをより減らせますし、さらに褥瘡がある場合でも褥瘡部位への圧迫が減ればより改善しやすいと考えています
さらに、”30度以上のギャッチアップを行うかどうか”、もエアマット選びを考える上で、非常に大切なポイントとなりますので以下で深堀りします。

3(補足)30度以上背上げする際の落とし穴

実は、エアマット選びにおいて、“30度以上の背上げをどのくらいの時間行うか”が非常に重要になります。
なぜこれが重要かといいますと、30度以上背上げをしますと、臀部にかなりの圧がかかります。そのため、それほどエアセルに厚みのないエアマットでは、エアセル収縮時に臀部がベッド底の固いフレームで圧迫される可能性があります。その対策として、エアセルに厚みのないエアマットは30度以上背上げをすると、臀部のエアセルを膨らみっぱなしにして、底付き予防しているのです。しかし、長時間背上げを続ければ、背上げにより臀部にかかる圧が強くなっているうえに、ずれを生じやすくなっているため褥瘡リスクが非常に高まってしまうのです。
これらの理由から、食事後など長時間30度以上の背上げを維持することは避けることが望ましいです(ただし、誤嚥予防や呼吸状態などで背上げが必要なときは、そちらが優先になることもあります。迷ったら主治医と相談しましょう)。
ただ、テレビを見たい、食事に非常に時間がかかる、など在宅の現場では長期間の背上げが続いているケースも少なくありません
そこで、30度以上の背上げを1.5時間以上行う方にはビッグセルアイズ®がすすめられます。前述のとおりビッグセルアイズ®はエアセルに非常に厚みがあるため、30度以上背上げをしても底付きしにくい構造になっています。そのため、30度以上の背上げでも臀部のエアセルは収縮が可能で、臀部にかかる圧迫をより軽減しやすくなり、褥瘡リスクを減らすことが期待できます(先ほど説明しましたネクサスIBやここちあ利楽flowにも同様の機能がありますがビッグセルアイズの方がエアセルに厚みがあるため褥瘡発生リスクが高い方にはより有用と考えます)。
※ただし、30度以上の背上げはビッグセルアイズを使用していても2時間以内に抑えることが無難と思われます(2時間以上背上げにおける褥瘡予防を実証したデータがないため)。

まとめ(エアマットの選び方のフローチャート)

最後に、エアマット選びにはかなり抑えるポイントが多く、整理が大変と思いますので、今までの内容をふまえ、患者さんの状態ごとにどのようにエアマットの選べばよいかフローチャートを示します。
※このフローチャートはあくまでも個人的な考えであることご容赦ください
褥瘡予防の中でも適切なエアマット選びは、ご本人を守るだけでなく、介護する皆さんの負担を大幅に減らすことができる、在宅医療では必須の知識だと思います
このフローチャートが、適切なエアマット選びの一助になれば幸いです。

なお、エアマットを使っていても踵の褥瘡に対しては十分な予防ができません。それはなぜか、どのように対策すればよいか、詳しくはテーマ③『踵褥瘡の予防』をご確認ください。
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