まもりさん
先生、いくら処置しても褥瘡が治りません。
褥瘡が治らないとき、治らない原因を考えることが大切です。
褥瘡が治らない原因って色々あって分かりにくいですよね
そうなんです。
そこで、褥瘡が治らない原因を、TIME+αとしてまとめると考えやすいです。
今回から6回にわたり、褥瘡治療の道標となるTIME+αのお話をしたいと思います。
目次
なぜ定番の処置で褥瘡は治らないのか?
1,ヨウ素配合剤(イソジンシュガー®、ユーパスタ®など)+ガーゼ
皆さん褥瘡にどのような処置を行っているでしょうか? “ユーパスタ®などのヨウ素配合剤を塗布してガーゼ保護する”、このような処置を行ってはいないでしょうか ?
もちろんこの処置で治る傷もあります
しかし、少なくとも特に凹みのあるような深い傷においてはこの処置では多くの場合治りません。
それには様々な理由がありますが、ヨウ素配合剤もガーゼも滲出液を吸収するために、傷を砂漠化させてしまっているというのが一つの理由です。
2,抗潰瘍外用剤を目的別に選ぶ方法の落とし穴
褥瘡など皮膚潰瘍の処置に有効な塗り薬には数多くの種類があります。 そして、それらを目的に応じて分類した以下のような図がよく用いられます。
しかしこの図を参考に治療してもうまく傷が治らないことがあります。その一例をご紹介します。
この褥瘡、ガーゼを見れば一目瞭然ですが浸出液が非常に多いです。そのため浸出液をコントロールする塗り薬が必要だと考えます。
そして、この図を参考にすると、浸出液をコントロールする塗り薬は破線で囲った部分、カデックス®やユーパスタ®であることがわかります。
しかし、これらの外用剤を使用しても滲出液を抑えることはできません。
それはなぜか?
このようにポケットを切開してみると ポケット内部に腱の壊死があることがわかります。 壊死した組織に菌が繁殖してしまうために 浸出液が増加していたのです。 そのため浸出液を抑えるには“浸出液をコントロールする塗り薬を使用する”、のではなくて、壊死組織を除去して菌の増殖を抑えることが重要なのです。
一般的に使用される褥瘡治療の指標ではうまく改善しないことがある
、そのため多くの医療従事者が治療方針に迷走しているのが現状ではないかと思います。
では褥瘡を治療する上で有用な指標は何なのか…、現状で最も効果的な褥瘡治療の指標が”TIME”だと考えています。
TIMEは褥瘡治療の羅針盤
ではタイムとは一体なんなのでしょうか
TIMEとは褥瘡が治らない4つ阻害因子の頭文字です。
それぞれの頭文字とは…
T Tissue non-viable or deficient(壊死組織・活性の無い組織)
I Infection or inflammation(感染/炎症)
M Moisture imbalance(湿潤の不均等)
E Edge of wound(創部辺縁の段差:ポケット・創辺縁段差)
つまり創を治すには、これら4つの阻害因子全てに対して十分に対策していきましょう、ということです。。
ただ、やっかいなのはこれら4つの阻害因子のうち、一つでも解決されていなければ、傷は治らないのです。
しかし、これら4つの対策をしっかり行えれば、創が治る可能性は高まることを経験上実感しています。
では、それぞれの阻害因子とそれをどのように対策していけばよいのかについて、次回以降お話ししていきたいと思います。
そして、ここまで説明しておいてなんですが、、実はTIMEだけを意識したのでは褥瘡は治りません。
TIME+αの”+α”が実はTIME以上に重要
こちらにつきましては、褥瘡治療⑥にて解説します。
では、次回以降で褥瘡(褥瘡以外の皮膚潰瘍も含め)治療を行う上で大切な知識や手技についてともに共有出来たら幸いです。