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褥瘡(床ずれ、寝ダコ)を作らないための2つの条件 その1

まもる君

せんせーい。どうしたら褥瘡を予防できるのか分からず 困ってます…

S先生

実は、褥瘡予防には2つの条件があります。
そのどちらかを満たせば、褥瘡は発生しないと考えています。

まもる君

それを知れば、どうやって予防すればよいのか、道筋を立て易いですね!
張り切って学びまーす!!

私、訪問診療など高齢者の皮膚診療に携わって5年以上経過していますが、減ってはいるものの、いまだに褥瘡発生をゼロにはできていません。
それは、褥瘡予防が決して容易ではないということを知るとともに、褥瘡が何故発生するのか、逆に、どうしたら発生しないのか が分からないため、十分な対策がなされていないということが、一つの原因ではないかと考えています。
褥瘡予防といえば、"体位変換" "エアマットの導入"…これはもちろん間違ってはいませんが、それだけでは予防に限界があります。
「褥瘡ができない条件を理解すること」で、日常に潜む様々な褥瘡発生リスクが回避しやすくなると考えます。
例えば、体位変換一つとっても、2時間おきに行う必要が本当にあるのか?
その他、車いすに乗る場合には、どのくらい座り続けてよいのか? など具体的な対策が立てやすくなるはずです。
限られたマンパワーの中で、いかに最小限の努力で最大の効果を出せるのかが、今後の褥瘡予防において、大きなカギを握ると思います。

これから数回にわたって褥瘡予防についてお話ししていきますが、今回はその土台となる「褥瘡を作らないための2つの条件」についてお話ししたいと思います。

ちなみに今回のお話しはYouTubeでも配信していますので、文章より映像や音声で!という方はそちらをご参照ください。
目次

褥瘡を作らないための条件 その1

褥瘡は何故できてしまうのか、その最もシンプルな答えは、長時間の圧迫だと思います。
でも、本当にそうでしょうか?

例えば、この紳士、1日中 眼鏡と帽子を身に着けています。つまり、ずっと眼鏡や帽子の圧迫をうけています。でも、褥瘡はできないですよね。

なぜ褥瘡ができないのか、それは、皮膚にかかる圧迫が弱いからです。“褥瘡を生じるほどの強い圧”と“褥瘡ができない弱い圧” …どこかに線引きができそうです。

その「線引きの基準」となるのは、組織を栄養する血管がつぶれるほどの圧がかかっているかどうかです。
ちなみに、皮膚を栄養する毛細血管の血圧は「32mmHg」といわれています。

そのため、32mmHgを超えるような強い圧がかかると、皮膚を栄養する毛細血管がつぶれるため、褥瘡発生のリスクとなります。逆に、圧が32mmHg未満であれば、血管はつぶれないため褥瘡は発生しないのです。

ということで

褥瘡ができない条件その1 弱い圧なら長期圧迫でも褥瘡はできない(一つの基準は毛細血管の圧32mmHg未満)

これを実際の現場で役立てるには、圧を測定する必要があり、現在〈パームQ®〉という「圧測定器」が販売されています。
パームQ
これを利用して圧迫部位の圧を測定することで、下の写真のように、現在の圧迫が持続すると褥瘡のリスクがあるかどうかを、ある程度 客観的に推測することができます。
ただ、この32mmHgというのは、あくまでも健康な方での目安です。
糖尿病や腎疾患などで血行の悪い患者さんでは、さらに低い圧迫で褥瘡を発症するリスクがあると思います。
そのため、“皮膚にかかる圧を可能な限り減らす対策をする”ことは褥瘡予防を考えるうえで、最もベースになると考えています。この対策法については、今後、詳細に説明していきたいと思います。

では、次回「褥瘡を作らない条件 その2」についてお話ししたいと思います。

今回のお話は、私の作成しておりますYouTubeでも詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。
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