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転移性皮膚癌を亜鉛華でんぷんでコントロールしよう!

まもりさん

癌が皮膚に転移して、においや出血で困っている患者さんがいます。なんとかなりませんか?

S先生

それはお困りですね。
そのような患者さんには亜鉛華でんぷんがお勧めです。
ただ、使い方こなすにはちょっとしたコツが必要です

まもりさん

ぜひ教えてください!

高齢化社会、在宅診療のニーズ増加などにより、在宅で癌の皮膚転移を対策することが度々あります。
癌の皮膚転移に対し、”ロゼックスゲル®”が保険適応になっていますが、コントロールが難しいことが しばしばあります
それはなぜか、以下に癌の皮膚転移で問題となることをあげてみます。
癌の皮膚転移で主に問題になること
1 悪臭
2 出血
3 癌の増大
じつは、ロゼックスゲルはこのうち、悪臭にはある程度対策できますが、それ以外にはほぼ無効だと考えられます。
では、どうすればよいか?
病院では、モーズペーストなどの対処法がありますが、大出血や化学熱傷などのリスクもあり、訪問診療で行うにはリスクが高い治療となります。
そこで、おすすめなのが”亜鉛華でんぷん”です。
亜鉛華でんぷんは上記の問題すべてにある程度効果がある、癌の皮膚転移におすすめな治療法です
今回は、亜鉛華でんぷんの作用と、実際の使用方法について、お話ししたいと思います。
目次

亜鉛華でんぷんとは

亜鉛華デンプン「コザカイ・M」の基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添付文書)【QLifeお薬検索】
QLife HPより引用
亜鉛華でんぷんは、亜鉛華軟膏などにも含まれている「酸化亜鉛」と「バレイショデンプン」で構成されている、保険収載されている外用剤です。
亜鉛華でんぷんの作用は以下の通りです。

亜鉛華でんぷんの作用
・収れん(タンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める)
・消炎
・防腐
・保護
・毛細血管の浸透性の抑制による創部の乾燥

癌の皮膚転移で問題となるのは“悪臭”、“出血”、”腫瘍の増大”などがありますが、亜鉛華でんぷんは、これら全ての問題に対してある程度の有効性を示す非常に理にかなった治療法なのです。

亜鉛華でんぷんの実際の使用方法

では、実際の使用方法を見てみましょう(最後に流れを動画で確認できます)。

亜鉛華でんぷんは粉ですので、やや使用方法にコツが要ります。
単に振りかけると、大量に粉が舞い散って、患者さんの服が真っ白になり、あとの掃除が大変になってしまいます。

そこで使用しているのが、調味料入れ(100均など)の容器です。
調味料入れに亜鉛華でんぷんを入れて振りかけます

では、使用の手順をご説明します。
基本的に処置は1日1回行います
STEP
洗浄剤による洗浄

弱酸性のプッシュ式洗浄剤などを使用して、優しく手で愛護的に洗います。創部だけでなく周囲の皮膚も含めて(ガーゼで覆われている範囲が目安)洗浄しましょう。

ここで注意点ですが、亜鉛華でんぷんは創部にくっつくため、無理に剥がそうとすると、出血のリスクがあります。そのため、手で愛護的に泡洗浄して、十分な水道水で洗い流して、剥がれたところのみを塗り足すようにして、前日の外用剤は無理に剥がさないようにしましょう

STEP
亜鉛華でんぷんをふりかける

周囲に粉が舞い散るため、腫瘍の周囲を複数枚の開いたガーゼで堤防のようにくるんだうえで、創部に振りかけると、効率よく創部に付着すると思います。

腫瘍が見えなくなるくらい、たっぷりかけることもポイントです。

STEP
ガーゼをのせ、覆い隠す

最後に、ガーゼ保護をするのですが、これも固定が甘いと粉が周囲にまき散ります。

STEP2で堤防上に囲ったガーゼと上に載せるガーゼを、全て十分に覆えるような幅の広いテープ(5cm幅のシルキーテックス®)などで固定するのがおすすめです。

さらに、創部に載せるガーゼは、できれば創部を乾燥させたいので、メロリンガーゼ®などのフィルムでコーティングされたガーゼよりは、通常のガーゼで固定する方が、無難です。

どうしても創部とガーゼがくっついて、出血のリスクなどがある場合に、メロリンガーゼなど非固着性ガーゼを使用したり、ガーゼにワセリンを塗って覆うと、剥がしやすく、出血のリスクを減らすことができると思います

では、これらの内容をふまえて、動画を見てみましょう。

まとめ

以上、癌の皮膚転移に対する、亜鉛華でんぷんの使用法についてお話ししてきました。
亜鉛華でんぷんを使用することで、特に在宅ではコントロールが難しかった、悪性腫瘍の皮膚転移に対する「出血」「悪臭」「浸出液」などが、かなり対策しやすくなると思います
ただ、処置に多少コツが必要ですので、ぜひ習得して、患者さんのQOL向上にお役立て頂けますと幸いです。
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