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生じると非常にやっかいな坐位褥瘡をいかに防ぐ!?(2026年4月20日更新)

まもりさん

長時間座っているとできてしまう坐骨部褥瘡って本当に治りにくいですね…

S先生

そうなんです…
特に深い坐骨部褥瘡は一度発症すると毎日の処置で治すことは非常に難しいです

まもりさん

やはり予防が大切ですね!

S先生

決めぜりふを先に言われてしまった…
では、今回は坐位による褥瘡の予防について学びましょう!

今回は坐位により生じる褥瘡のお話です。
始めに知っていただきたいのは坐位により生じる褥瘡は主に2か所あるのです。
それは坐骨部と尾骨部です。これらあまり聞きなれない方もいると思いますし、場所が分かっていないと、いざ褥瘡が発生した際に、坐位が原因では?という推測ができませんので、これらがどこにあるのかお示しします。

坐骨部・尾骨部の局在部位
坐骨部
椅子に座ったときに、お尻の下で体重がのる左右2か所の骨ばった部分
少しかための椅子に座ると、お尻の下に左右でコツコツ当たるところがありますが、そこが坐骨のあたり

尾骨部
お尻の割れ目のいちばん上から、少し下へたどったところにある、背骨のいちばん先のしっぽのような小さな骨の部分
転んでしりもちをついたときに痛くなりやすい場所
イラストで示すと上図のようになります。特に、尾骨と仙骨は間違いやすいので要注意です。仙骨部褥瘡は仰臥位、尾骨部褥瘡は坐位やギャッチアップにより生じやすいため、対策が異なりますので確実に分けられるようにしましょう
※ただ、この記事は、とくに治りにくい坐骨部褥瘡の予防を中心にお話しします。尾骨部は、座り方に加えてギャッチアップ時のずれ対策も大切です。詳しくは褥瘡予防テーマ④『ポジショニング』の記事をご覧ください。

そして、とくに、坐骨部褥瘡は一度できてしまうと保存的に治すのが非常に難しい褥瘡です。
そのため、形成外科の先生にお願いして、外科的な治療(皮弁)などをお願いすることも少なくありません。
しかし、この手術は難易度が高く、手術後の患者さんも創部の管理が大変な上に、感染症など手術の合併症も少なくありません。さらに、それだけでなく、坐骨部褥瘡の手術はうまくいっても再発が少なくありません。一報では約4割が再発した報告もあります(Di Caprio G, Serra-Mestre JM, Ziccardi P, et al. Ann Plast Surg. 2015;75:552-555)
そのような現状において、坐骨部褥瘡は未然に防ぐことが非常に大切であることが分かると思います。
では、今回は坐骨部褥瘡の予防法について学びましょう!
目次

坐骨部褥瘡の予防が特に必要な患者さんとは?

例えば高齢者施設に訪れると、入居者が日中ほとんどを椅子(または車いす)に座って過ごされています。
つまり高齢者施設に入居する多くの方が坐骨部褥瘡のリスクがある、と言えます。
ただ、少ない介助者で多くの入居者を介護している施設も少なくありません。
そんな中で、これからお話しするような、坐骨部褥瘡予防を長時間座っている入居者全員に行おうとすると、スタッフの方がへとへとになってしまいます…
そのため、坐骨部褥瘡予防を行う入居者をある程度選別する必要があります(もちろん全員対策するにこしたことはありませんが)。そこで、大切なのが、どのような方が坐骨部褥瘡を生じるリスクが高いのかを知る、ということです。
それは、以下のような患者さんだと考えています。
重点的に坐位褥瘡予防を行う対象(私見)

1 去に坐骨部・尾骨部褥瘡を生じたことがある場合
 (過去の褥瘡部は瘢痕化して耐圧性が落ちているため、健常な皮膚よりも再発しやすいです)

2 2時間以上坐位を維持し、以下の①②いずれかに当てはまる場合
 ① 下肢・体幹の麻痺、または臀部の知覚低下がある

 (知覚低下の目安:座っていても痛い・しびれると訴えない、座り直しのしぐさが見られない。糖尿病性神経障害・脊髄疾患のある方は特に注意、また認知機能低下で「お尻が痛い」と訴えられない方)
 ② 自分で体重移動できない、または座り直しが難しい
 (同じ姿勢で固まっている方も含む。判断が難しいときはプッシュアップテストで確認)
※これはあくまで個人的な考えてあることをご理解ください。
上記を評価するうえで、②のプッシュアップテストは聞き馴染みがないと思いますので、方法を以下にお示しします。
 1. 車いすに座った状態で、机やオーバーテーブルに両前腕を肘から手首まで乗せる
2. 前腕で机を押すようにして、お尻を座面から浮かせる
判定 30秒以上お尻を浮かせ続けられる →問題なし
  全く浮かせられない or 30秒未満しか保持できない→ 困難と判定

坐位の褥瘡は治りにくいうえに、実は予防法も簡単ではありません。まずは適切に坐位での褥瘡リスクがある患者さんをピックアップして対策することが大切です。
ただ、ここに当てはまらないケースは対策を行う必要がない訳ではありません。例えば、坐骨の骨突出部に持続的発赤(1度褥瘡)があるなど褥瘡リスクのある場合などは対策が必要です。

坐位による褥瘡予防のポイント 3選

では、ここから実際の坐位での褥瘡予防の方法をお話します。

1 適した車いすを選ぶ

一つ目のポイントは、適した車いすを選ぶということです。
この適した車いすのポイントを以下にお示しします。
車いす選びのポイント
1 90度ルール:足をフットサポートにのせた状態で、股関節・膝関節・足関節が90度になるように車いすを調整する
(90度は“目安”で、拘縮・疼痛・体幹バランスに合わせて調整。リハ職/福祉用具専門職の評価で“圧集中とずれを減らす座位”を優先)
2 肘を90度に曲げたとき、前腕全体がアームサポートに自然に触れるようにアームサポートの高さを調整する
90度ルールを守った姿勢を保持することで、体重を肘・臀部~大腿部・足底に分散することができ、坐骨部への圧集中を避けることができます。
ただ、足の長さや腕の長さには個人差があるため、90度ルールを守るためには適切な車いすを選ぶことが大切になります。そのため、車いすは導入時に、介護福祉用具の専門スタッフなどにより適切な座位を保持できるように調整してもらうことをおすすめします
私、車いすは専門ではありませんので、上記内容はあくまでも目安であり、より適切な車いす選びにつきましては専門の方にご確認ください。

2 定期的にプッシュアップなどで減圧する

ポイント2つ目は定期的なプッシュアップなどを行い、お尻の持続的な圧迫から解放しましょう、ということです。可能な限り定期的に坐骨など骨突出部にかかる圧をゼロに近づけることが大切です。
その方法には、おおまかに3つの方法があります。
そして、最後にプッシュアップをどのくらいの間隔でどのくらいの時間行えばよいのかお話しします。

2-1 自力でお尻を浮かせられる場合

まずは、単独で行える対策が可能かを確認します。以下の2つの方法がおすすめです。
①机に両腕をのせて前かがみになってお尻を浮かせる(イラスト左)
②片方ずつ臀部を浮かせる(イラスト右)

※タイヤをロックし、フットレストは上げて足は地面に接地させて行う
もし、①の方法を30秒~60秒間、保持が可能な方であれば、①を行うことをお勧めします(1回で済み姿勢保持も比較的容易なため)。
片方ずつ浮かせる場合は、時に車いすから転倒のリスクもありますので、反対側のアームサポートをしっかり握るように指導し、不安な方は可能であれば介助者がそばに立って見守るようにしてください。体幹バランスが弱い方は、無理せず2-2の介助方式に切り替えましょう。

2-2 自力でお尻を浮かせられないが、介助者がいる場合

自力でのプッシュアップが難しいですが、介助者がいる場合は、介助者によるプッシュアップを行います。
この場合も2つの方法があります。
①机に患者さんの腕を乗せてもらったうえで介助者が臀部を持ち上げる(イラスト左)
②(机がない場合)介助者が横から臀部を持ち上げるのを左右それぞれ行う(イラスト右)
介助者を介する場合も、①の方法を30秒~60秒間、保持が可能であれば、①を行うことをお勧めします(1回で済み姿勢保持も比較的容易なため)。

2-3 自力でお尻を浮かせられず、介助者もいない場合

プッシュアップの方法3つ目は、自力でのプッシュアップは難しく、さらに介助者のサポートも得られない場合です。
この場合は下のイラストのような電動ティルト型車いすの使用をお勧めします。ティルト型車いすとは下のイラストのように背もたれを傾けると、それに合わせて座面も傾く車いすのことです(⇔座面が傾かないのはリクライニング車いす)。ティルト型を選ぶことで、背もたれを倒しても臀部がずれにくく褥瘡予防にも有効です。
ティルト型車いすの背もたれを可能な限りフラットに近づくように傾ける(嚥下・呼吸・血圧・医療機器の状況に合わせて、安全に実施できる範囲で)
背もたれの傾きが十分でないと、臀部に集中した圧迫を十分には逃がすことができませんので、可能な限りフラットに近づけることが大切です。

2-4 プッシュアップはどのくらいの間隔で、どのくらいの時間浮かせればよいのか?

最後にプッシュアップを行う間隔と、臀部をどのくらいの時間浮かせればよいのか、についてお話しします。
実はこれらについて、国際ガイドラインでも明確な推奨時間は記載されていません
一つの目安として、持続的な圧迫により血行不良になった場合、十分に皮膚に血流が戻るのには2分ほどかかるといわれています。
ただ、2分間のプッシュアップを行おうとすると、自身でやっていただければわかりますが、2分間お尻を腕の力で浮かせ続けるのは、健常の方でも至難の業です。
とはいえ、プッシュアップしてください、という説明では現場も困りますので、私は以下のように説明しています。
推奨されるプッシュアップの間隔と持続時間
1 標準的な対策
 15~30分ごとに15~90秒(できれば30秒以上)お尻を浮かせる or ティルト型車いすをフラットにする

2 在宅などでこまめなプッシュアップが難しい場合
(私案)
 60分ごとに60秒お尻を浮かせる or ティルト型車いすをフラットにする


※定期的に臀部を観察して、骨突出部の1度褥瘡(持続的な発赤)や紫調変化などがないかを確認し、みられればプッシュアップの間隔や持続時間を見直す
標準的な対策で示すように、本来坐位で生じる褥瘡予防としては、短時間でよいのでこまめにお尻を浮かせることが大切になります。
特に脊髄損傷などで下肢の麻痺や臀部の知覚障害がある患者さんが、長時間車いすに座っている場合、褥瘡発生のリスクが高いですので、腕力の程度や介助者の有無などに応じて、患者さんに合った十分なプッシュアップを行いましょう。例えば、タイマーなどをセットしたり、切りのいい時間(12時、12時30分…など)に行うと決めておくと、忘れにくいと思います。
また、赤み・紫色変化を見つけた場合は、テーマ⑧1度褥瘡を見逃さない、をご参照ください。

3 車いすクッションを利用する

坐骨部褥瘡予防の3つ目は適切な車いす用クッションを利用する、ということです。
始めにみなさんご承知とは思われますが、ドーナツ型(穴あきリング)など、圧が周辺に集中しやすいものは避けましょう。
車いす用クッションには様々な種類がありますので、それぞれの特徴を以下にお示しします(あくまでも個人的な意見ですので参考程度で)。
このように同じ車いす用クッションでもかなり個性があり、坐骨部褥瘡リスクの程度、金銭面、介護力などを含めて患者さんに適したクッションを選ぶことが大切です。
以下に、これはあくまでも私見ではありますが、選び方の一つの目安をお示しします
車いす用クッションの選び方(私見)
・脊髄損傷などで坐骨部褥瘡のリスクが高い+ある程度出費可能:圧切換型エアークッション
・坐骨部褥瘡リスクがあるがもう少し出費を抑えたい+適切な空気の調整が可能:エアークッション
・坐骨部褥瘡のリスクはそれほど高くない+長期の使用が必要:ジェルクッション
・坐骨部褥瘡のリスクはそれほど高くない+短期の使用:ウレタンクッション


※エアマット導入から1~3日以内に、臀部を観察し骨突出部の1度褥瘡(持続的な発赤)や紫調変化などがないか、座り心地や姿勢の崩れなどをチェック
問題があればクッションやプッシュアップの間隔や持続時間を見直す
ここで注意していただきたいのは、例えば圧切換型エアークッションを選べばプッシュアップは必要ない、というわけではありません。さらに、エアクッションは調整が不適切だと底付きを起こし悪化することがありますので、こまめに空気の漏れを確認しましょう。
さらに介護度2以上ある場合は基本的に介護保険の適応になりますのでケアマネジャーと相談してください。
このようにして、適切なクッションを選びつつ、プッシュアップも同時に行っていくことが大切です。

まとめ

以上、坐骨部褥瘡の予防法についてお話ししてきました。
では、まとめです。
坐位褥瘡リスクについて適切にスクリーニングを行う
坐骨部褥瘡対策は以下の3点
 ①患者さんに適した車いすを使用する
 ②定期的にプッシュアップなどの減圧を行う
 ③患者さんに適した車いす用クッションを使用する
冒頭でもお話ししましたように坐骨部の褥瘡は一度生じると治すことが非常に難しいです。
その現実を、リスクの高い患者さん方に知っていただき、未然に十分な対策法を啓蒙・実践してもらうことが、患者さんの坐骨部褥瘡発生を一人でも減らすのには大切だと思います
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