まもりさん長時間座っているとできてしまう坐骨部褥瘡って本当に治りにくいですね…



そうなんです…
特に深い坐骨部褥瘡は一度発症すると毎日の処置で治すことは非常に難しいです



やはり予防が大切ですね!



決めぜりふを先に言われてしまった…
では、今回は坐骨部褥瘡の予防について学びましょう!
坐骨部の褥瘡は一度できてしまうと保存的に治すのが非常に難しい褥瘡です。
そのため、形成外科の先生にお願いして、外科的な治療(皮弁)などをお願いすることも少なくありません。
しかし、この手術は難易度が高く、手術後の患者さんも創部の管理が大変な上に、感染症など手術の合併症も少なくありません。さらに、それだけでなく、手術がうまくいっても約40%が再発するという報告もあります(Di Caprio G, Serra-Mestre JM, Ziccardi P, et al. Ann Plast Surg. 2015;75:552-555)。
そのような現状において、坐骨部褥瘡は未然に防ぐことが非常に大切であることが分かると思います。
では、今回は坐骨部褥瘡の予防法について学びましょう!
目次
坐骨部褥瘡の予防が特に必要な患者さんとは?


例えば高齢者施設に訪れると、入居者が日中ほとんどを椅子(または車いす)に座って過ごされています。
つまり高齢者施設に入居する多くの方が坐骨部褥瘡のリスクがある、と言えます。
ただ、少ない介助者で多くの入居者を介護している施設も少なくありません。
そんな中で、これからお話しするような、坐骨部褥瘡予防を長時間座っている入居者全員に行おうとすると、ブラックよりの仕事認定されそうです…
そのため、坐骨部褥瘡予防を行う入居者をある程度選別する必要があります(もちろん全員対策するにこしたことはありませんが)。そこで、大切なのが、どのような方が坐骨部褥瘡を生じるリスクが高いのかを知る、ということです。
それは、以下のような患者さんです。
個人的印象
脊髄損傷や脳卒中などにより下肢に麻痺がある(下肢がほとんど動かせず、臀部に知覚障害がある)患者さんは坐骨部褥瘡の発症リスクが高い
これはあくまで個人的な印象ですが、脊髄損傷の患者さんがもっとも坐骨部褥瘡のリスクがあり、しかも、一度褥瘡ができると非常に治りにくい印象があります。
そのため、脊髄損傷の患者さんが坐骨部褥瘡の予防(治療)のため、時に長期臥床を強いられていることがあります。ただ、やはり患者さんのQOLが最も優先されるべきですし、患者さんがなるべく車いすで生活を希望されるのであれば、それを尊重し、その分、これからお話しします、坐位での褥瘡予防を十分に行っていただくことをおすすめします。
坐骨部褥瘡予防のポイント 3選
では、こから坐骨部褥瘡の注意点についてお話しします。
1 適した車いすを選ぶ
一つ目のポイントは、適した車いすを選ぶということです。 この適した車いすのポイントを以下にお示しします。


車いす選びのポイント
1 90度ルール:足をフットサポートにのせた状態で、股関節・膝関節・足関節が90度になるように車いすを調整する(90度は“目安”で、拘縮・疼痛・体幹バランスに合わせて調整。リハ職/福祉用具専門職の評価で“圧集中とずれを減らす座位”を優先)
2 肘を90度に曲げたとき、前腕全体がアームサポートに自然に触れるようにアームサポートの高さを調整する
90度ルールを守った姿勢を保持することで、体重を肘・臀部~大腿部・足底に分散することができ、坐骨部への圧集中を避けることができます。
ただ、足の長さや腕の長さには個人差があるため、90度ルールを守るためには適切な車いすを選ぶことが大切になります。そのため、車いすは導入時に、介護福祉用具の専門スタッフなどにより適切な座位を保持できるように調整してもらうことをおすすめします。
※私、車いすは専門ではありませんので、上記内容はあくまでも目安であり、より適切な車いす選びにつきましては専門の方にご確認ください。
2 定期的にプッシュアップする
ポイント2つ目は定期的なプッシュアップ、つまり、定期的にお尻を浮かせて持続的な圧迫を回避しましょう、ということです。臀部の圧を弱めるのではなく、確実に浮かせて圧をゼロにすることが大切です。
その方法には、おおまかに3つの方法があります。
そして、最後にプッシュアップをどのくらいの間隔でどのくらいの時間行えばよいのかお話しします。
2-1 自力でお尻を浮かせられる場合
腕力がある方であれば、自身の腕の力でお尻を浮かせます。 腕力に応じて2つの方法があります。


①腕に十分な力があれば両腕でお尻を浮かせる(イラスト左)
②十分に力がない場合は片方ずつ臀部を浮かせる(イラスト右)
2-2 自力でお尻を浮かせられないが、介助者がいる場合
自力でのプッシュアップが難しいですが、介助者がいる場合は、介助者によるプッシュアップを行います。 この場合も2つの方法があります。


①机に患者さんの腕を乗せてもらったうえで介助者が臀部を持ち上げる(イラスト左)
②(机がない場合)介助者が横から臀部を持ち上げるのを左右それぞれ行う(イラスト右)
2-3 自力でお尻を浮かせられず、介助者もいない場合
プッシュアップの方法3つ目は、自力でのプッシュアップは難しく、さらに介助者のサポートも得られない場合です。
この場合は下のイラストのような電動ティルト型車いすの使用をお勧めします。ティルト型車いすとは下のイラストのように背もたれを傾けると、それに合わせて座面も傾く車いすのことです(⇔座面が傾かないのはリクライニング車いす)。ティルト型を選ぶことで、背もたれを倒しても臀部がずれにくく褥瘡予防にも有効です。


ティルト型車いすの背もたれを可能な限りフラットに近づくように傾ける(嚥下・呼吸・血圧・医療機器の状況に合わせて、安全に実施できる範囲で)
背もたれの傾きが十分でないと、臀部に集中した圧迫を十分には逃がすことができませんので、可能な限りフラットに近づけることが大切です。
2-4 プッシュアップはどのくらいの間隔で、どのくらいの時間浮かせればよいのか?
最後にプッシュアップを行う間隔と、臀部をどのくらいの時間浮かせればよいのか、についてお話しします。
実はこれらについて、国際ガイドラインでも明確な推奨時間は記載されていません。
一つの目安として、持続的な圧迫により血行不良になった場合、十分に皮膚に血流が戻るのには2分ほどかかるといわれています。
ただ、2分間のプッシュアップを行おうとすると、自身でやっていただければわかりますが、2分間お尻を腕の力で浮かせ続けるのは、健常の方でも至難の業です。
とはいえ、プッシュアップしてください、という説明では現場も困りますので、私は以下のように説明しています。
プッシュアップの間隔:基本は15~30分ごと
プッシュアップの持続時間:15~90秒(できれば30秒以上)
このように坐位で生じる褥瘡予防にはこまめにお尻を浮かせることが大切になります。
特に脊髄損傷などで下肢の麻痺や臀部の知覚障害がある患者さんが、長時間車いすに座っている場合、褥瘡発生のリスクが高いですので、腕力の程度や介助者の有無などに応じて、患者さんに合った十分なプッシュアップを行いましょう。例えば、タイマーなどをセットしたり、切りのいい時間(12時、12時30分…など)に行うと漏れにくいと思います。
そして、可能であれば定期的に臀部を観察して、骨突出部の1度褥瘡(持続的な発赤)や紫調変化などがないかを確認し、みられればプッシュアップの間隔や持続時間を見直すことも大切です。
3 車いすクッションを利用する
坐骨部褥瘡予防の3つ目は適切な車いす用クッションを利用する、ということです。
始めにみなさんご承知とは思われますが、ドーナツ型(穴あきリング)など、圧が周辺に集中しやすいものは避けましょう。
車いす用クッションには様々な種類がありますので、それぞれの特徴を以下にお示しします(あくまでも個人的な意見ですので参考程度で)。


このように同じ車いす用クッションでもかなり個性があり、坐骨部褥瘡リスクの程度、金銭面、介護力などを含めて患者さんに合ったクッションを選ぶ必要があります。 以下に、これはあくまでも私見ではありますが、選び方の一つの目安をお示しします。
車いす用クッションの選び方(私見)
・脊髄損傷などで坐骨部褥瘡のリスクが高い+高額な出費可能:圧切換型エアークッション
・坐骨部褥瘡リスクがあるがもう少し出費を抑えたい+適切な空気の調整が可能:エアークッション
・坐骨部褥瘡のリスクはそれほど高くない+長期の使用が必要:ジェルクッション
・坐骨部褥瘡のリスクはそれほど高くない+短期の使用:ウレタンクッション
ここで注意していただきたいのは、例えば圧切換型エアークッションを選べばプッシュアップは必要ない、というわけではありません。さらに、エアクッションは調整が不適切だと底付きを起こし悪化することがありますので、こまめに空気の漏れを確認しましょう。
適切なクッションを選びつつ、プッシュアップも同時に行っていくことが大切です。
まとめ
以上、坐骨部褥瘡の予防法についてお話ししてきました。 では、まとめです。
・長期座位の患者さん、特に脊髄損傷などで下肢をほとんど動かせない患者さんには、十分な坐骨部褥瘡予防を行う
・坐骨部褥瘡対策は以下の3点
①患者さんに適した車いすを使用する
②定期的にこまめなプッシュアップを行う
③患者さんに適した車いす用クッションを使用する
冒頭でもお話ししましたように坐骨部の褥瘡は一度生じると治すことが非常に難しいです。
その現実を、リスクの高い患者さん方に知っていただき、未然に十分な対策法を啓蒙・実践してもらうことが、患者さんの坐骨部褥瘡発生を一人でも減らすのには大切だと思います。