非皮膚科医
ステロイド外用剤が有効な皮疹ってどうやって見分けているのですか?
お、いい質問ですね~。
実はステロイド外用剤が有効な皮疹かどうかを100%見分けることはできません
…(汗)
ただ、ある程度見分けるポイントはあります
ぜひ教えてください!
前回は、痒みの患者さんで抗アレルギー剤が有効な患者さんは一部にすぎない、というお話をしました。 では、かゆがる患者さんにどのように対応すればよいのでしょう? それは、一言でいえば以下のようになります。
高齢者のかゆみの原因として圧倒的に頻度が高いのが、湿疹性病変を代表とするステロイド外用剤が有効な疾患
ということで、ステロイド外用剤が有効な疾患をある程度見分けることができれば、多くのかゆみを生じる患者さんを改善させることができるのです。
今回はどのような皮疹を見たらステロイド外用剤が有効な疾患の可能性があるのか、そんな話をしたいと思います。
目次
ステロイド外用剤が有効な皮疹の見分け方
ステロイド外用剤は炎症を抑える薬です。
ということは 炎症を生じた皮膚はどのように変化しているのかを知ることができれば、ステロイドの適用がわかるはずです。
ということで、始めに、炎症を生じると皮膚にどのような変化が起こるのか、今回は高齢者のかゆみの原因として頻度が高い"皮脂欠乏性湿疹"について、皮膚の断面図を使って説明したいと思います。
こちらは皮膚の断面のイラストです。厚さ0.2mmほどの表皮の一番表層にサランラップ一枚ほどの厚さの角質層があります。
この角質層がかゆみから皮膚を守るために非常に大切な役割をしています。
ここで皆さんに質問です。加齢とともにこの角質による皮膚のバリア機能は低下していると思いますか?
実は一般的に高齢になってもバリア機能は維持されています
もちろん、加齢とともにバリア機能を担う角質の産生能は質的にも量的にも低下します。
しかし、加齢とともにターンオーバーが遅くなることで角質が堆積するためバリア機能の明らかな低下は生じない、のです。
しかし、ナイロンタオルなどで擦る、熱いお風呂に長く入る、など何らかの刺激で角質が壊れてしまうと…
上のイラストのように、皮膚の中の水分は、壊れた角質層の隙間から逃げ、乾燥してしまいます。 皮膚が乾燥すると…
細菌やアレルゲンなどかゆみの原因物質が簡単に皮膚の中に入りこみかゆみを生じてしまいます。また、表皮内にかゆみを感じとる神経(C線維)が侵入してしまうことで痒みに敏感になってしまいます。それらの影響によりかゆみを生じ、皮膚をひっかくと…
皮膚の中で炎症を生じます。この炎症により毛細血管が拡張します。湿疹を生じた皮膚が赤く見えるのはこのためです。 さらには炎症によってリンパ球などの免疫細胞が集まってくるため皮膚が盛り上がるのです。
この炎症がさらなるかゆみの原因となり、皮膚をひっかいてしまうとさらにバリアが壊れてしまいます。その上、擦る刺激で炎症がさらに誘導されてしまうのです。
このように乾燥肌を放置すると、かゆみの悪循環に陥ってしまいます。
では今までの説明を踏まえて、皮膚の中で湿疹性の炎症生じた場合に見た目にどのような変化が起こるのかお見せしたいと思います。
こちらは下腿の皮脂欠乏性湿疹の臨床像です。皮疹のポイントは
湿疹の特徴 ①毛細血管の拡張により皮膚が赤く見える ②皮膚から水分が逃げるため皮膚がざらざらしている ③炎症細胞の浸潤により皮膚が盛り上がりぼこぼこしている
先ほどから皮膚断面のイラストを用いて説明してきました炎症のメカニズムと臨床像が見事に一致していることがわかると思います。
ステロイド外用剤が有効な皮疹の見分け方 まとめ
ステロイド外用剤=炎症を抑える薬
皮膚に湿疹性の炎症を生じた場合の皮疹には以下のような特徴がありました。
ステロイド外用剤が有効な皮疹=湿疹性の炎症を生じた皮疹
その3徴
①かゆみがある
②赤みがある
③皮疹を触るとざらざら・ぼこぼこした皮膚の変化がある
この3徴を指標にステロイド外用剤を使用するかどうか検討するのがおすすめです。 最後に、今回のお話で最も伝えたいことをお示しします。
ステロイド外用剤が有効な皮疹かどうかは見た目だけでは分かりません
”かゆみなどの症状がないかを確認したり 実際に皮疹を触ってざらつきやぼこぼこした皮膚の変化がないかを確認する”、ということが非常に大切です
ただ ここで難しいのは、かゆみ・赤みやざらつき・ぼこぼこ感があっても 必ずしもステロイド外用剤が有効な場合ばかりではありません。逆にステロイド外用剤を使用することで悪化してしまうケースもあります。 そのような場合何を考えどのように対処していけばいいのか 次回お話したいと思います。